◆語りかけることの大切さ

退避シェルターとなっている地階フロアは、小さな教室に分かれている。低学年児童が学ぶ教室では、10人ほどの児童が黒板を見つめていた。

「森にはどんな鳥がいますか。さあ思い浮かべてみて」

先生は、絵や写真を見せる。
「鳩、ツバメ、コウノトリ」

児童たちは、元気よく答えた。

低学年児童の授業。写真や図を使い、対話に重点を置いていた。(2025年4月・クラマトルスク・撮影・玉本英子)
学童園は、日本の七田式教育メソッドを参考にして、心の豊かさをはぐくむ教育に重点を置いているという。(2025年4月・クラマトルスク・撮影・玉本英子)
オンライン授業では読み書きの力が付きにくく、教室での授業を望む保護者が多い。だが、前線に近い東部では、ほとんどがオンライン授業。学童園は教室での授業だが、幼稚園児と低学年児童のみだった。(2025年4月・クラマトルスク・撮影・玉本英子)

そのわきでは、2年生の児童5人が、肩を寄せ合って文学の授業を受けていた。ここでも、先生と子どもたちが対話しながらのやりとりだ。

「地下の狭い教室だけど気にならない。だって、ここでは先生と友達と会って話せるから」
ダーシャさん(8歳)が、うれしそうに言った。

「地下の狭い教室だけど気にならない。だって、ここでは先生と友達と会って話せるから」と笑顔のダーシャさん(8歳・左端)。(2025年4月・クラマトルスク・撮影・玉本英子)
「困難な状況のなかでも、子どもたちの学びの場を維持したい」との思いで、学童園を運営するハンナ・オシェプコヴァ代表。(2025年4月・クラマトルスク・撮影・玉本英子)

学童園を運営するハンナ・オシェプコヴァさん(48)は、ウクライナ各地で教育事業を手掛けてきた。だがロシア軍の侵攻後、いくつかの施設は閉鎖を強いられた。「困難な状況でも、子どもが互いに学び、遊ぶことで人間性を育む場を確保したい」との思いで、規模を縮小しながらもクラマトルスクで学童園を維持している。子どもたちと対話する教育の重要性を、こう語る。

「戦争で子どもたちが強いられるオンライン授業の弊害は、互いに会話したり、社会性を身に着けたりすることができないことです。子どもたちに語りかけ、話を聞いてあげる。コミュニケーションを絶やさないことが大切です」

遠くで爆発音が聞こえることもある。そのたびに、「あれはドアがバタンと閉まる音よ」と子どもに伝えながら、退避措置を講じる。

防空警報が出ていない間に、上階のキッチンで昼食をとる子どもたち。それ以外の時間はすべて地階で過ごす。(2025年4月・クラマトルスク・撮影・玉本英子)
幼稚園児には、お昼寝の時間がある。寝る前に、みんなで体操して気分をほぐす。(2025年4月・クラマトルスク・撮影・玉本英子)
一緒に遊ぶと、すぐに仲良しになれる。(2025年4月・クラマトルスク・撮影・アジアプレス)

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