◆「家族への思いが支えてくれる」
タラス砲手(40)は、ウクライナ北西部、リウネの出身。侵攻前は、ヨーロッパ各地を回って建設作業員として働いていた。スマホを取り出し、家族の写真を見せてくれた。妻と幼い息子、娘と一緒に映る一家の笑顔。「家族への思いが自分の支えてくれる」。彼は、照れながら顔をほころばせた。
現場での苦労はありますか、と聞くと、こう言った。
「家族と会えないのは仕方ない。任務については、みんなもう慣れたからね。命令を受けたら、それに従う。苦労でいうと、砲兵はまだマシなほうだ」
目の前のロシア軍と撃ち合う歩兵部隊は過酷だ、と誰もが言う。接敵線の少し後方の位置から敵陣に砲弾を撃ち込むのが仕事の砲兵は、同じ戦闘現場でも「まだマシ」なのだそうだ。それでも、この場所はロシア軍陣地から5キロの地点だ。向こうも砲撃や自爆ドローンで攻撃を仕掛けてくる。


狭い退避壕のなかで、仲間どうしで話す兵士たちには笑みも浮かぶ。だが、ときおり、ふっと放心したような表情になる。
カメラを向けていないとき、ほかの戦線で大きな犠牲が出た別部隊の司令官へのいらだちを口にする兵士もいた。圧倒的な武器・兵力のロシア軍と対峙するだけでなく、自軍の無謀な指揮が損失拡大を招く現実のなかで、彼らは過酷な任務に向き合っている。「故郷や家族を守るため」との思いはあっても、戦況が悪化する実際の現場では、それだけでは立ちいかないのも実情だ。

























