◆専門家らと定めた対策すら無視
さらに重大なのは、過去の石綿飛散事故を受けて専門家らと定めた「対処方法」を完全に無視していることだ。
金岡高校では2012年10~11月の不適正作業により石綿が飛散し、生徒や職員がばく露したとみられる事故が発生。保護者からの要望を受けて専門家や保護者代表などで構成する協議会を設置して、健康リスクの評価や事故を検証してきた。2018年1月に府教育庁がまとめた「大阪府立金岡高等学校アスベスト飛散事故に関する検証結果報告書」には、「万が一」今回のような石綿飛散が起きた場合の「対処方法」が明記されている。
報告書の最後にある「第4章 リスク評価結果を踏まえた今後の対応」に「3.アスベストが万一検出された場合の対処方法」との項目がわざわざ設けられ、次のように記載されている。
〈気中濃度測定等によりアスベストが万一検出された際には、公表を行うとともに、速やかに学校と連携して立入制限等の措置を講じ、現場状況を確認・点検し、真空掃除機等による清掃活動を徹底的に行った上で、気中濃度測定により適切な処置が行われたことを確認する。〉(120ページ)
つまり、筆者が必要と指摘してきた、公表や立ち入り制限、(原因究明も含むとみられる)現場状況の確認・点検、真空掃除機等による徹底的な清掃のいずれについても実施を求めているのだ。
念のため、計13回の協議会の議事録で該当する議論を確認したが、これらの記載について府側は異論を唱えていなかった。複数の委員にも確認したが、これらの記載に府が反発したにもかかわらず、委員側が強硬にこの記載を求めて入れさせたとの事実もないという。専門家や保護者と協議し、府側も納得して定めた「対処方法」ということになる。
なぜ府教育庁は専門家らと協議して定めた対策をあえてすべて無視したのか。これも4月2日に府(施設財務課)に事実確認を求めたが、結局14日午後6時までに回答がないままだ。
一方、学校側は13日に筆者の取材に応じた。
事務長によれば、2022年12月の石綿飛散についての対応は、人事異動で当時を知る者がおらずわからないという。2025年11月17日の測定では、同20日の速報値で石綿飛散が判明。同日すぐ府教育庁(同)に相談し換気対応を決めた。報告書記載の対処方法について言及はなかったという。
学校側に「人事異動などで(報告書の求める対処方法を)認識しているものがいなかった」「改めて報告書を見て、再認識したというのが実態」と釈明。報告書が求める対応ができていなかったことを認めた。
事務長の話では、筆者が府教育庁に報告書の記載について質問を送った翌4月3日、特別教室棟4階について立ち入りを制限。6日に清掃の専門業者が4階廊下の床面を真空掃除機で清掃したという。ただし適切な清掃だったのかなど詳細は不明。また今後改めて対策工事を実施するというのだが、これも詳細は説明が得られなかった。
生徒らが石綿ばく露し続ける状況ではないことには安心したが、2022年と2025年当時の対応は報告書に沿っておらず、適切ではなかったことになる。とくに2025年11月の石綿飛散では、窓を開けて飛散源の石綿を屋内で拡散させただけの可能性がある。
石綿汚染の対策では、飛散防止のうえで汚染源を(石綿を除去できる)真空掃除機や濡れ雑巾などで清掃して取り除くことが基本だ。窓を開けることはいたずらに汚染範囲を拡大し、清掃をより困難にする行為といわざるを得ず、明らかに間違った対応である。
府教育庁や学校は過去の飛散事故を教訓化するために報告書が定めた対処をわずか4年で忘れ去ったことになる。何のために何億円も掛けて事故の検証をしたのかと呆れるほかない。再度、徹底した検証が必要だ。























