「牛のように畑すきをするために山に来た」という80過ぎの老人(右)。2013年6月とある地方の山中で撮影ミンドゥルレ(アジアプレス)

 

北朝鮮の社会主義労働法によれば、一定の勤続年数を超えた60歳以上の男性と55歳以上の女性には、月給の60〜70%を老齢年金として支給することになっているが、「国定価格」による配給が消えた現在の北朝鮮ではまったく意味をなさない。

規定に従えば、老齢年金は500ウォンから1500ウォン程度になる。だが、2016年7月現在、白米1キロの価格は5000ウォン程度だ。一月分の年金で買えるのはコメ100~300グラムでしかないのだ。

生活難で、子は親の扶養ができず、政府も責任を負わないため、まだ体が動く老人たちは、市場や路上で商売することになる。だが、この老婆のようにコチェビ(ホームレス)に転落してしまうことも珍しくないのだ。

山で集めた草枝を焚き物として売り歩いていた老婆。2013年3月平安南道平城市にて撮影ミンドゥルレ(アジアプレス)

山で集めた草枝を焚き物として売り歩いていた老婆。2013年3月平安南道平城市にて撮影ミンドゥルレ(アジアプレス)

◆老体で肉体労働や商売で現金稼ぐ

2013年3月平安南道平城市。一人のおばあさんが、枯れ草枝を背負って歩いていた。自分の体躯の2〜3倍にもなる量である。撮影者の証言によると、このおばあさんは、金を稼ぐために山に行って薪を集めて売っているのだという。

写真を見れば、北朝鮮当局の宣伝とは異なり、実際には老人のための福祉が皆無であることがわかる。

自分が食べ行くのも大変な者は、親の扶養を拒否するしかない。国家も老人の基本的な生活を保障することを放棄したままだ。北朝鮮では、今も多くの老人が路上に追いやられている。

※社会主義労働法では、労働能力を失って面倒を見る人がいない老人や障害者は、国が養老施設で無料で世話をすることになっている。

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