また、パレスチナでは自爆攻撃でしか抵抗の意思を示すことができないと思う人がいます。良い悪いはともかく、これが自分達の最後の手段だと思って爆弾を体に巻いて突っ込んで行く。その行為で多くのイスラエルの民間人が亡くなっているのも事実です。

そういう風に暴力をどう考えるかについては、僕にもまだはっきりと結論は出ていません。さっきも言いましたが、僕自身は絶対的な平和論者ではないかもしれない。ある最終的な局面において軍事力や武力の存在が暴力を抑制することが現実にあるかもしれないし、抵抗のための暴力の行使もあるわけです。

しかし、いかなる場合であれ、暴力の行使を認める前にもっとすべきことがあるというのが僕の考えです。つまりそれは平和的にものを解決する努力をギリギリまでしたうえで、最後の最後に軍事力、暴力という選択があるということです。

そういう努力をしないで、安易に軍事力に頼る短絡的な思考に対しては絶対に反対です。憲法9条の理念は心から共感できるものですし、誇りに思っています。平和的に国際貢献できる道はあると確信しています。そのような意見を言うと、「理想論だ。現実はそんなに甘くない」と批判されますが、そのようなことを主張する人ほど現実から学ぶということがない。

小泉首相をはじめ、勇ましいことを言う政治家たちは、一度でも戦争の現場に足を踏み入れたことがありますか?「現実は甘くない」という人たちは、どれほど世界の紛争の現場を歩いてきたのですか?
20数年間、戦争や難民発生の現場を歩いてきたジャーナリストとして、憲法9条の精神は理想論ではなく、日本にとってもっとも現実的な選択を示していると思っています。

質問に戻れば、大義があろうとなかろうと、どんな戦争でもやってはいけないという立場は理解できます。ただこれを現実世界の中でどう考えるかは、僕自身の中でも明確な答えは出ていないと言わざるをえないですね。

※この稿は、シンポジウムの発言に一部加筆しました。
これは以下のシンポジウムでなされた野中章弘の発言をまとめたものです。
シンポジウム「自己責任論を巡って」
日時:5月30日 在日本韓国YMCA
パネリスト:
ジャーナリスト:野中章弘(アジアプレス)
NGO:吉岡達也(ピースボート共同代表)
司会兼:西野瑠美子(VAWW-NET Japan共同代表)
主催:WORLD PEACE NOW 実行委員会
(2004年6月18日)