この「靖国に祀られているあなたへの手紙」という企画には、発起人たちのほかにも、ノンフィクション作家の江川紹子、日名子暁、評論家の佐藤文明、井家上隆幸、大学教員の
金子勝、池田清彦、漫画家の石坂啓、映画監督のジャン・ユンカーマン、それに沖縄からは作家の目取真俊も原稿を寄せてくれた。

八日のお昼ごろ、靖国神社のお茶屋さんに二十人の関係者が集まり、それぞれのやり方で「死者(英霊)」と対話を行った後、衆議院会館へ移動して会の発足記者会見を開いた。
記者たちへ配った声明文の中で、「靖国に<死者>の声を聞きにゆく」という企画の趣旨をぼくたちは次のように説明した。

「・・・私たちは、この国の運命が生者の声、いま生きてある者たちの選択にのみ委ねられているとは思わない。死を忘れるな。死者たちの意思をこそ畏れよ。この国の戦後六十年間の平和と繁栄の礎となった死者たちの呻きと叫び、アジア・太平洋のさまざまな地と海の底から響き渡ってくるその何倍もの死者たちの声をこそ私たちは聞き、ともに交感し、思索し合い、生者と死者の言葉を重ね合わせたいと思う。

二〇〇五年十二月八日、私たちは靖國に〈開かれた庭〉に行こう。小泉旋風と、反日の強風が吹き荒れ、改憲の風雲が急を告げる庭に赴くだろう。
そこで、私たちは木霊するあなたたちの言葉に耳を傾けよう。戦争の歴史と、その慚愧と反省から生まれた日本国憲法の、とりわけ前文と第九条が謳う不戦主義の重要性をともに考え、この国が今後、近隣アジア諸国と国際社会においてどう生きていくべきかをめぐって静かに対話したいと思うからである。

死霊よ、語れ。慟哭し、呻き、叫べ。
私たちも、語ろう」(起草は吉岡忍、吉田司など)
「死者への手紙」は靖国に凝縮され、複雑にからみあった思想の糸を、丹念に解きほぐしていく作業のひとつとして始めたものである。これから、より多くの人びとの参加を呼びかけていきたいと思う。

(月刊「望星」06年2月掲載分---その3) 次回に続く