以前の財産没収がどんなものだったかについてお話しよう。中央党組職指導部のある課長が「管理所」に入って来た時は次のようだったという。
まず、その家の家財道具と荷物を庭先に並べさせる。すると、車に乗った「隊内民」の警備隊の連中がわっとやって来て、その家の財産を物色して好きなだけ持っていく。ただでさえ平壌を出る時に何だかんだと取り上げられ、やっとの思いで持ってきたものだが、お構いなしだ。

「管理所」では、このような財産没収をスムーズにするために、新品、特に電気製品などに対して「回収規定」を設けていた。カメラなども「回収品目」に入っていたという。
だから、規定を口実に品物を「回収」していけば、あっという間に車一台がいっぱいになる。するとまた別の車がやって来て、「回収」していく。
「管理所」でのこういった財産没収が、党の言うところの「革命化」に必要だったのだろうか?
現金を奪うために身体検査をすることは常識になってるので、「移住」して来る者は、とにかくあちこちに金を隠す。

革命化対象となった人々の中には幹部出身の金持ちも多い。
革命化に送り込む時は、だいたい目星をつけておいて選別検閲して取り上げるのだが、枕などに隠したものは、幸運にも見つからないこともあるという。また、誰かに預けておいてから後で持って来てもらうことも多い。
「隊内民」は小土地(未登記の隠し畑)をけっこう持っている。「移住民」にはもちろんそのようなものはない。「隊内民」たちの小土地には、「無報酬」が動員されて農作業をさせられる。

統制区域の中に売店を作って商売をする人々はもちろんみんな「隊内民」だ。フィルター付タバコなどを売っている。
「移住民」や「解除民」は、賄賂として渡すタバコを買うために高い金を出さなければならないのだ。一箱でも高いのに、賄賂として渡すためには何箱も要るため大変である。
本来、私たち「解除民」は出入証をもらって外出をすることができることになっている。
次のページへ ...

★新着記事