家で賃加工の靴製造に精を出す女性。家族全員でひと月に10万ウォン稼ぐという。 2007年9月、平安北道。 リ・ジュン撮影。

家で賃加工の靴製造に精を出す女性。家族全員でひと月に10万ウォン稼ぐという。 2007年9月、平安北道。 リ・ジュン撮影。

※本稿は「論座」(朝日新聞社)2008年8月号に書いた「北朝鮮の大変化を追尾せよ」を再録したものです。

北朝鮮内に住むリムジンガン記者のリ・ジュンが、数年前に家を引っ越した。住んでいた家を売って少し広い家を買ったという。
社会主義を標榜する北朝鮮では、土地や建物は共同所有ではないのか?それを売り買いするとはどういうことなのか。
理解のできない私に、リ・ジュンはこともなげにこう言った。

「家の売買は農村以外では当たり前になっている。今では、その仲介をする『コガンクン』と呼ばれる不動産業者まで生まれている。自分も今の家をそんな業者に探してもらった」

北朝鮮では、土地は国家または、協同組合所有で、住宅もごく一部を除いて大部分は国家の所有である。
朝鮮戦争後の50年代後半からベビーブームが起こって以来、北朝鮮ではずっと深刻な住宅難が続いてきた。特に都市部では、2世帯同居、一間をカーテンで仕切って二家族が使うということも珍しくなかったという。

国家住宅に入居するには、地域の政府である人民委員会の都市経営局住宅配定課から、「入舎証」(国家住宅利用許可証)の発給を受けなければならない。
しかし、住宅不足が慢性化しているため、希望する場所や広さの住宅を割り当てられるのは至難の業であった。
住宅問題が構造的に変化したのは、90年代の大飢饉が発端だった。
食糧難に喘ぐ人たちが、最後の手段として住宅を売ろうとする動きが現れたのだ。

また、200-300万人(石丸推定)に及ぶ大量の餓死者の発生もあり、住宅の大量供給がにわかに発生した。
これは生活に余裕のある人々にとっては、より広くて便利な場所に家を手に入れられるきっかけになり、住宅売買は一気に活性化した。
しかし、法制度が変わって不動産の個人所有が認められたわけではなかった。
からくりはこうだ。

売りたい人と買いたい人が金額で合意すれば、「入舎証」の名義登録変更を役所に申し込む。役人はそれが実質的に国家住宅の売買であることを知りながら賄賂を取って登録する。
表面的には所有権が移転するわけではなく、使用者名義が変更されるだけだ。
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