闇の「不動産業者」も出現
今では、軍を除隊した将校や、新しい赴任地に移動することになった党、警察、保衛部(情報機関)の幹部たち、いわば権力機関の人間に対しても、国家による住宅割り当てはほとんど行われなくなり、売買を通じて新しい住居を確保することが常態化しているという。
需要が旺盛なため、取引の仲介をして手数料を稼ぐ「コガンクン」たちは、間取りや設備、立地条件、価格といった住宅情報を積極的に収集し、商売を競い合っているという。

「都市部では、平屋の一軒家の場合、駅や市場から近く、水道や電気供給の条件が良く、野菜を作ったり犬や豚を飼える庭の広い家が好まれる。清津(チョンジン)市や咸興(ハムン)市の場合、二間と台所の平屋が市中心部では2000―3000ドルで売買される。
高層アパートはエレベーターもないし、電力難のせいで水道が出ないので人気がない」
とリ・ジュンは言う。

一方、かつて高級幹部用に建てられた、広く立地もいいアパートは「1万ドルアパート」と呼ばれ、富の象徴のように考えられている。
最近では、腐敗した特権層とその周囲に寄生して金を稼いだトンチュ(金主の意)と呼ばれる新富裕層たちは、共同して金を出し合って一等地に高級アパートを建て、販売するケースもあるという。

これも建前上は国家住宅の割り当てを装うが、実態は我々の社会の不動産投資と変わるところはない。
国家所有の不動産が売買されるという、北朝鮮式社会主義秩序の根幹を揺るがしかねない現象が発生しているのは、労働党政権が住宅問題を解決できず、社会の需要を満たせなくなっていることに原因がある。「住宅取引の闇市場」は、誰が指導したわけでもないのに、国家に代わって住宅流通機能を立派に代行しているのだ。
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