「わが家の暮らしは朝鮮でコチェビの次にひどいと思います」というチェ・スミさん。

「わが家の暮らしは朝鮮でコチェビの次にひどいと思います」というチェ・スミさん。

 

生活に追われる若者の不安、恨み、そして失望 2

取材・整理 リ・ジンス(二〇〇九年六月取材)
〈インタビュー1〉チェ・スミさん 二二歳女性 下

一五〇日戦闘への動員と取締り
Q:北朝鮮では一五〇日戦闘中(当時)ですよね? 一五〇日戦闘とはどのようなものなのでしょうか?
A:最近は、若い人にも中年の人たちにも、無職、つまり職場に行かない人が増えたので、まずその人たちを皆、掌握統制して職場に送りだします。つまりひとりの人間も遊ばずに、立ち上がれという運動です。自分の職場の出勤率から先ず一〇〇パーセントにして、自分の持ち場で皆が革新を起こそうということです。皆が力強く立ち上がって、何があっても二〇一二年度には「強盛大国の扉」を開けようという大戦闘なんだそうです。

Q:あなたの場合は具体的にどのようなことをするんですか?
A:主婦や私のような職場の無い人たちは、全員農村に動員されます。

Q:それでも、そこに行けば食糧の配給をくれて食べさせてくれるんじゃないんですか?
A:すべて自己負担なんですよ。ご飯も間食も家で準備していきます。だから(動員に行くと持ち出しになり)もっと苦しくなるんです。配給も長い間もらっていないし。

Q:それはタダで労働させるということですか? 人々の不満が積もっていくのではないですか?
A:はい。タダの労働です。不満があっても、どうしようもありませんから......。

Q:行きたくない場合にはどうするんですか?
A:学生の動員の場合、金持ちの奴らは先生にお金を渡したりすれば免除されます。でも貧乏な家の子はどうしようもありません。学生以外の場合は、取締りに遭った場合、労働教化(懲役刑)に送られることもあるし、労働鍛錬隊に送られることもあります。

Q:先ほど、市場で取締りに合うと荷物を没収されると言いましたが、それと今回の一五〇日戦闘は何か関係があるんですか?
A:今は農村への総動員期間なので、昼間に出歩くと、特に市場に出かけると白い目で見られるし、下手すると荷物を没収されます。それで昼間は皆、家でじっとしていて午後三時、四時ごろになって市場に出てきます。

それで、動員されて労働しても給料が出ない、ご飯も食べさせてくれない、それに加えて市場で商売もできないんじゃどうやって食べていけばいいのかと、陰でひそひそと皆、文句を言っています。

昨年までは、それでもなんとか飢えずに生活できましたが、今年は去年よりひどくなったのは確かです。商売をしてもよく売れないし、市場での取締りが厳しく、荷物が少しでも大きいと取り締まられます。昨年はわずかでも稼げばそれなりに食べていけたんですが、いま現在、私の周りではお粥しか食べられない人がたくさんいます。いまは商売がまともにできないために、本当に苦労しながら暮らしています。

Q:一五〇日戦闘のために取締りが厳しくなっているわけですね。
A:そうですね。一五〇日戦闘が終わっても「一〇〇日戦闘」がまた続くんだそうです。それじゃ今年は一年中戦闘ばかりして終わるのかと、人々は言い合っていました(笑)。一年三六五日のうち二五〇日戦闘するから、一年中戦闘だねと(笑)。
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