4.設問
定期連絡とインタビューでは、いくつか共通の設問項目を立てた。コメ、トウモロコシ米の価格と、中国元と米ドルの交換レートは、毎回調査した。トウモロコシ米とは北朝鮮の庶民の主食で、トウモロコシの粒の薄皮を加工して除き米粒状に砕いたもの。他にガソリン、豚肉についても問うているが、全量輸入のガソリンの価格は地域差が大きく、参考値として挙げるに留めた。これとは別に、もちろんその時々のトピックスや事件事故、生活相についても聞いた。

◎調査の限界
今回の調査には次のような限界があった。

1.調査地域の偏り
江原道全域と、大都市のうち開城(ケソン)市、南浦(ナンポ)市の人とは接触することができなかった。また、サンプルは平安南・北道、咸鏡北道、両江道、平壌市郊外地区が大部分であった。

2.特権階層の不在
地方の中堅幹部とは何度か接触できたが、党や国家機関、軍、国営企業の上級幹部、特に平壌の上級幹部とは直接接触できなかった(内部の記者たちは数人の上級幹部を取材している)。合法的に中国に出て来た人たちは権力機関にコネがあったり賄賂を払う余裕があるが、特権階層と呼べるような人はいなかった。

3.無作為調査ができない
北朝鮮内部の情報提供者たちも、中国で面談調査した人たちも、接触可能な人に限られ無作為に抽出することができなかった。

4.調査期間の一部に信頼に足る情報が得られなかった空白がある。
(つづく)
注1北朝鮮は鴨緑江と豆満江の二本の川で一四〇〇キロにわたって中国と接する。国境線から二キロほどまでは、中国の携帯電話の電波が届き通話が可能である。北朝鮮国内と外部世界を結ぶ貴重な連絡手段になっている。北朝鮮当局は中国の携帯電話の使用を厳しく取り締まっている。

〈リムジンガン〉混迷深める北朝鮮経済(1)-1
〈リムジンガン〉混迷深める北朝鮮経済(1)-3
〈リムジンガン〉混迷深める北朝鮮経済(1)-4
〈リムジンガン〉混迷深める北朝鮮経済(2)-1
〈リムジンガン〉混迷深める北朝鮮経済(3)-1

★新着記事