Yoi Tateiwa(ジャーナリスト)

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【連載開始にあたって  編集部】
新聞、テレビなどマスメディアの凋落と衰退が伝えられる米国。経営不振で多くの新聞が廃刊となりジャーナリストが解雇の憂き目にさらされるなど、米メディアはドラスティックな構造変化の只中にある。 いったい、これから米国ジャーナリズムはどこに向かうのか。米国に一年滞在して取材した Yoi Tateiwa氏の報告を連載する。

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第1節 ウィッキーリークスと調査報道(4)
大手メディア参加者へのインタビュー

セミナーの後、シーファーにインタビューした。ペンタゴンペーパー事件は是認されて、なぜWLは是認されないのだろうか?
「ペンタゴンペーパーは政府が隠していたベトナム事件の真実を暴くものだった。だが、WLの流した情報というのは、政府が機密にはしていたが、それは政府が何かを隠していたという類のものではない。

だからまず、ジャーナリズムとは言えない。それに情報の入手の仕方、そしてネットでばらまくというやり方がどうなのかとも思う。不幸中の幸いは、彼らがニューヨークタイムズのような責任有るジャーナリズムにその情報を託したという事だ。きょう聞いていて、ニューヨークタイムズが如何に適切な対応をしたのかがわかった」

シーファーの語った「responsible journalism=責任有るジャーナリズム」という言葉は、一連のWLの問題で多く聞かれたものだ。それは、情報を右から左に流すのではなく、内容を精査して、その報道による結果を忖度して報じるという事になるのだろうか。

シーファーのCBSにしろ、ニューヨークタイムズにしろ、ワシントンポストにしろ、それらは主要メディアと呼ばれる特別な地位を与えられた存在だ。
しかし結果的にはこの3社は全てWLの入手した資料を遅かれ早かれ報じている。

入手の仕方に問題が有るのと言うのであれば、なぜシーファーのCBSは後追いしたのだろうか?シーファーに尋ねた、「責任有るジャーナリズム」とは何なのか?
「そこが難しいところだ。何れにしろ、大変な問題だし、簡単に結論が出せるような話ではない」
最後は逃げられてしまった。

ワシントンポストのカレン・ディヤングに、「指を加えて他のメディアが流すニュースを待っている心境とはどういうものだったのか?」と尋ねると、苦笑いしながら、「この世の終わりといったどん底のような気持ちだったわ。2度と味わいたくないわ」と話した。

これは正直な話だろう。ワシントンポストだって、ニューヨークタイムズが入手したと同じだけ、或いはそれ以上の情報を事前に入手したかった筈だ。その時、WLの違法性を議論していなかったとは言わないが、そうした議論は二の次だったのではないかと推測する。

セミナーで「責任有るジャーナリズム』と評価されたニューヨークタイムズのスコット・シェーンに、「内容の削除の判断は国務省の要請に基づいたものか?仮に、そうであれば、ジャーナリズムの在り方として問題ではないのか?」と尋ねた。

スコット・シェーンの答えは、「こうした判断はあくまでもニューヨークタイムズとしての判断であり、国務省の要請に基づいたものではない」と話した。
このCSISのセミナーでの議論は極めて重要な情報を提供してくれているが、ジャーナリズムのWLに対する姿勢としては疑問が多い。場所がワシントンDCであり、開いたシンクタンクは保守派の牙城のようなところだという点に留意が必要だろう。

次に西海岸でジャーナリストが開いたWLに関するセミナーの議論を見てみたい。そこでは、WLをどうジャーナリズムに融合していくのかという本質に迫る議論が展開されていた。
(つづく)

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