足元は地下水が溜まってる。皆パンツ一丁になって作業するんだが、七三年頃までは女性の採炭工もいた。彼女たちも暑いから、手製のカスムティ(胸帯=ブラジャー)で胸だけは覆ってた。作業もきついし、皆真黒になるから羞恥心なんて感じてる余裕はなかった。

「便所なんてないから、横穴で用を足す。まあ、臭いがきつかったのなんの。大小便の臭い、ガスの臭い、坑木の腐った臭い。坑が「ビシッ、ビシッ」と音がするのが恐ろしかった。食事は弁当を持って入るのだが、地面に置いておくとネズミに食われてしまうので壁に掛けておくんだ。
「掘り出した石炭は、地上から下ろされてくる「炭車」に積み込む。一台に五〇〇キロ、それを「一分隊」が六台で三トン積むのがノルマだった。

「坑内で使う言葉は日本語が多かったね。例えば、「炭車」や「人車」を運転する者を「乗りまわし」、熟練工を「サキヤマ」、見習いを「アトヤマ」、車を入れることを「ナガシ」、ワイヤーを巻き揚げ機で引っ張り上げることを「マキアゲ」と呼んでいた。巻き揚げ機は三〇〇馬力の日立製作所の物を使っていたな。ポンプも日本製だった」。

※北朝鮮の多くの生産工場がそうであるように、炭鉱も軍隊式に大隊―中隊―小隊―分隊に組織されている。末端の分隊の人員は三〜四人だという。游仙炭鉱は従業員が三〇〇〇人ほどだったが、警察と保衛部(情報機関)が置かれていたという。
(つづく)

◆ 〈リムジンガン〉現地取材:衰退する石炭産業の現在(6)
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