◆日中の軍事衝突が起きれば、沖縄は紛争の最前線に

ところが、全国的にみると、辺野古への新基地建設もやむをえないという風潮が支配的です。

日本政府も、大半のマスメディアも、中国の軍事的脅威を言い立て、中国に軍事的に対抗するための日米同盟強化と沖縄の米軍基地の重要性を唱えているので、国民の多くはそれに影響されているのでしょう。

しかし、そうした論調・意見・風潮には大事な点が欠けています。

それは、沖縄県民の立場をよくよく考えてみるということです。

私は基地問題の取材で沖縄を訪れたときに、
「もしも尖閣諸島をめぐって日中の軍事衝突が起きれば、沖縄は紛争の最前線になり、基地を標的にミサイルが飛んでくる。また沖縄が戦場にされ、ふたたび本土防衛の捨て石にされてしまう」と不安を感じ、危惧する人たちの声をたびたび聞きました。

政府と大半のマスメディアは、日米同盟の強化こそが政治的・軍事的な見地からして最も現実的な、リアルな安全保障の考え方であり、その観点からも沖縄の米軍基地の維持と辺野古への新基地建設は必要だと主張しています。

しかし、沖縄で暮らす人びと、そこで生きてきて、これからも生きつづけようとする人びとの視点に立てば、仮に日中両国が軍事衝突をしたら、自分たちの地域・生活空間がふたたび戦場にされてしまうということが、現実そのものなのです。

沖縄戦体験者が共通して語るように、
「(日本軍の)基地があったから戦場になった」
「軍隊は住民を守らない」
「戦争で最も犠牲を強いられるのは民間人」

という沖縄戦の歴史の教訓に照らして情況を見れば、軍事衝突を絶対に引き起こさないという選択肢を最優先させ、軍事的対応ではなく、外交的・経済的な結びつきを強める方向で問題解決を図ることこそが、最も現実的な、リアルな安全保障の考え方ではないでしょうか。

それが、沖縄戦の痛みの記憶に根ざしたリアルな「命の視点」にほかなりません。