◆環境保全の問題は解決されていない

たとえば、沖縄・生物多様性市民ネットワークや日本自然保護協会など環境保護団体は、 (1)ジュゴンやウミガメやサンゴなど生態系の保全措置、 (2)埋め立て土砂に混入するアルゼンチンアリなど侵略的外来種による害、 (3)オスプレイの騒音や安全性、など環境保全の問題は解決されておらず、公有水面埋立法第4条の「環境保全と災害防止への十分な配慮」という承認基準を 満たしていない、と強く批判しました。

仲井真知事による埋め立て承認の直後、沖縄・生物多様性市民ネットワークの吉川秀樹さんは、筆者の取材に答え、次のように指摘していました。

「沖縄県は日本政府による普天間基地移設計画の環境影響評価書〔環境アセスメント〕に対して、『生活環境と自然環境の保全を図ることは不可能』との 知事意見を出していました。その後、政府から補正評価書が提出され、埋め立て申請の手続きに入ってからも、沖縄県環境生活部が、『申請書の環境保全措置で は不明な点があり、懸念が払拭できない』と不備を指摘しています。こうした問題点がはたして解決されたのか、具体的な説明もないまま知事は埋め立てを承認 しました。きわめて不透明で、環境保全の科学的判断よりも政治的判断を優先させています」

「環境影響評価書」は環境影響評価法にもとづくもので、その内容は埋め立て承認の審査において精査されなければなりません。

日本政府は新基地建設を迫るアメリカ政府の意向に従い、公有水面の埋め立て申請の前提となる、沖縄県への「環境影響評価書」を2011年12月に提出しました。

しかし、その「環境影響評価書」は、 (1)埋め立て予定海域のサンゴや海草藻類やジュゴンなどへの影響を低く見積もっている、 (2)土砂による水の濁りについて説明が不十分、 (3)埋め立て用土砂の調達先と運搬経路が不明、 (4)オスプレイ配備による騒音・低周波の影響が不明、など問題だらけの内容でした。

沖縄県は「環境影響評価書」を精査したうえで、2012年2月と3月に、「飛行場建設についての知事意見」と「埋め立てについての知事意見」を提出しました。

そのなかで、計579件にも上る問題点を指摘したうえで、「国は事業の実施に際して、環境保全上、特段の支障は生じないとしているが、評価書で示された環境保全措置等では、生活環境と自然環境の保全を図ることは不可能」と結論づけたのです。

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