北朝鮮の協同農場では、2013年から国家に収める生産ノルマを超過した分は、農民が取り分として自由に処分することが許されるようになった。生産意欲を高めようという当局の措置だった。農場員たちは当初、この新しい政策を歓迎した。
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ところがこの措置では、農薬や肥料などの営農資材の農民負担が増えた。春に農場から供給された営農資材の代金の多くは、秋の収穫から現物で支払わねばならない。また、農民たちも衣服や石鹸など日用品を現金で買わねばならないのだが、現金を得る手段は分配を受けた食糧を市場で売るしかなく、秋の収穫前に絶糧状態になってしまうのだ。

何より当局が設定する生産ノルマが多すぎ、農民の取り分である分配量が少ないのだ。さらに春に前借りした食糧を、利子を付けて返済しなければならない上、軍隊支援などの名目で「愛国米」の供出も強いられる。軍糧米や首都米(平壌市民への配給米)の供出も強いられる。

穀倉地帯の黄海南北道では2011年の洪水被害で大幅な収穫減に見舞われたが、それでも政権は通常のノルマを農民に課して強制的に穀物を供出させたため、翌2012年の春先から生産者である農民が大勢餓死する悲劇が発生している。
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職業と居住地の選択の自由がない北朝鮮では、農民世帯に生まれると、子々孫々農場に勤めなければならない。暮らしがしんどいかからといって、都市に出て労働者になることはほぼ不可能だ(農村女性が都市男性と結婚し場合がごく稀な例外)。

取材協力者たちによると、昨年は全国的に豊作だったというが、それでも多くの農場員世帯で、今春に早々と分配を食べ尽くしてしまっていたという。今年の農業不振によって、来年の農民の困窮はさらに酷いものになる可能性がある。2回へ >>>
(石丸次郎)

※アジアプレスでは、北朝鮮に住む人たちとチームを作って国内事情を調べている。普段の連絡は、北朝鮮に密かに搬入した中国の携帯電話を使っている。国境から北朝鮮領域数キロまで電波が届き、通話やメールのやり取りが可能だ。

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