◆消えたアスベスト取り残し記録

市が「保有していない」ページに記載された写真の1つ。よくみるとたしかに螺旋状に白く盛り上がったアスベストの取り残しが確認できる(事業者提供の資料より)

たとえば報告書の19ページには、4月11日の作業後に目視確認をした状況について、そのようすがわかる写真を添付しつつ、こう説明する。

〈煙突掃除口から煙突出口(上部)を撮影。螺旋状に除去残しが確認できる〉
〈煙突掃除口から煙突中段を撮影。螺旋状に除去残しが確認できる〉
〈煙突掃除口から低部を接写。薬液で白くなった除去残しアモサイト(カポスタック)〉

さらに20ページでは、4月15日の作業後のようすとして、こう述べる。

再作業後のようすを記録した報告書のページの一部。アスベストが除去されないままとなっていることが指摘されている(事業者提供の資料より)

〈煙突掃除口から煙突底部─中段を撮影。4/12に手の届く範囲を再度除去したと聞いたが、落としきれていないようだ。再度除去した後の測定は実施していない〉
〈煙突掃除口から低部を接写。薬液で白くなった除去残しアモサイト(カポスタック)〉

おおよそ理解いただけると思うが、詳しく補足しておこう。煙突内部にはカポスタックという厚さ5センチメートルの断熱材が使われていた。この断熱材はセメントにアスベストの1つで発がん性の高いアモサイト(茶石綿)を70~80パーセントと高濃度に混ぜた代物だ。今回これを除去したのだが、断熱材の取り残しが螺旋状に煙突内部の上から下まで見つかった。

螺旋状に取り残しがあるのは、高圧水で断熱材を削り取る機械を煙突の上からワイヤーで吊るなどして中に入れて使用するため。この機械は横回転するようになっており、それによって煙突内部の全面を削り取ることができる。ところが、使い方が下手だと、今回のように螺旋状に取り残しが出ることになる。

再作業後のようすを写した写真。一番手の届きやすい煙突下部にもかかわらず、薬液で白くなったアスベストの取り残しが散見される(事業者提供の資料より)

この取り残しを4月12日に手作業で改めて除去したが、高さ5.3メートルある煙突で手の届く範囲の作業でしかない。しかも手の届く下部や中部でも取り残しが存在することが報告されている。その結果、再作業でも手の届かなかった上部の取り残しは手つかずのまま残され、中~下部もきれいに除去されたわけではなく取り残しが見つかっている状況だ。

報告書をみる限り、それ以上アスベスト除去をした記録はない。

つまり、報告書は除去しきれないまま煙突内部にアスベストが残されているにもかかわらず、工事が終了されたことを指摘しているのだ。

今回の除去工事は堺市が違法工事をして書類送検を受けた原因となった現場の後片付けである。周辺にアスベストをまき散らしたことにより、現在も周辺住民や隣接する保育所の児童らの健康リスク調査が進行中の状況でそんないい加減なことが本当にあり得るのか。

なんと2月15日の交渉で市から取り残しの存在を認める発言が飛び出したのである。(続きを読む>>>)

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