◆国境の川に接近するには

無事に清津市に到達することができたら、次は「承認番号地域」内の茂山(ムサン)、会寧(フエリョン)、穏城(オンソン)などの国境の都市に向かう。

汽車で直行できる茂山、穏城の間は、清津市から取り締まりが非常に厳しくなる。「承認番号」のある通行証を持っていないと、中国逃亡の疑いをかけられる確率が高い。

したがって清津から古茂山(コムサン)までのおよそ40キロの道を、徒歩や車を拾って向かう人も多い。そして、古茂山からは茂山方面、会寧方面、穏城方面など、自身が計画した脱出ポイントに方向を決める。

しかし、道路もさらに23の「10号哨所」を通らなければならない。ここからは徹底した通行証検閲がある。「10号哨所」を避けるために貨物列車に飛び乗るか、山道を迂回するのが普通だ。また、国境近くの鉄道駅付近では、保衛員(秘密治警察に該当)、人民軍検閲軍官らが巡察しており、不審な旅行者たちの取り締まりに目を光らせている。

さて、国境近くの都市に入ると、いよいよ次は豆満江への接近である。ここでも国境線沿いの村に行く主な道の検問を避けなければならない。ここからは国境警備隊による取り締まりだ。

この先は通行証に目的地の国境の村の名前が明記されていないと通れない。たとえ自分の通行証の目的地欄に、国境都市の「茂山郡」と書かれていても、中国と国境を突き合わせている村の名前が正確に記されていなければならない。国境の川辺に向かう途中で逮捕されるケースも非常に多い。

こうしてすべての道程を運良く通過し、豆満江が眺められる地点に着いても、最終的に国境警備隊の監視の目を縫って豆満江に飛び込まなければならない。川辺には50~数100メートル間隔で、国境警備隊の潜伏哨所(穴倉の詰所)が設けられている。ほとんどの脱出者が夜間に渡河するのはこのためだ。

ここで国境警備隊に捕まると、越境未遂者として直ちに取り調べとなる。下手をすると1年未満の強制労働、場合によっては裁判にかけられ3年以上の教化刑に服すことになる。

同様に、両江道方面から中国に脱出する場合の主な目的地は恵山(ヘサン)市、慈江道方面の場合は江界(カンゲ)市、平安北道方面の場合は新義州(シンウイジユ)市となる。

だが、新義州は鴨緑江下流に位置し、川幅が広くてほとんどの人は脱出地点に選ばない。また鴨緑江中流より下の中国遼寧省は漢民族が大部分で言葉が通じず、潜伏も難しいため越境地点として適当でないことは前に述べたとおりだ。(続く)

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