建設現場でアスベスト(石綿)を吸って肺がんなどを発症した健康被害に対する京都府内の元労働者らによる訴訟で、国の賠償責任が確定したことを受け、田村憲久厚生労働大臣は2月2日の記者会見で「責任を感じ、深くお詫びを申し上げます」と謝罪した。しかし、今後の対応について具体的には言及せず、同省トップとしてのリーダーシップを示したとは言い難い。(井部正之)

厚生労働省で会見し、早期の政治解決を訴える東京1陣の原告団ら

◆求められるトップの決断

1月28日、最高裁が国や建材メーカー8社の上告を退ける決定をした。これにより全国の同様の集団訴訟で最高裁決定で国の敗訴が確定したのは2020年12月14日の東京1陣訴訟に続いて2例目。建材メーカーの責任が確定したのは初めて。

同省が2月3日に公表した会見概要によれば、田村大臣は「国に責任があると認められたことについて、重く受け止めておるわけでございまして、原告の方々に対して責任を感じ深くお詫びを申し上げます。同高裁判決等を踏まえ、適切に対応したいと考えております」と表明した。

しかし、具体的な対応内容については説明しなかった。会見概要をみるかぎり、記者からも質問が出ていない。

記者会見での田村大臣の発言について、原告側弁護団の福山和人弁護士は単なる「決まり文句」を述べただけと指摘する。

「国はこの間裁判で14連敗しているんです。横浜地裁で出された最初の神奈川1陣だけは国が勝ちましたけど、(神奈川1陣の控訴審含め)その後のすべての裁判で国は負け続けている。薬害にしろ大気汚染公害訴訟にしろ、ふつう国は2~3回負けたら、手をついて謝って政治解決なりするんです。

ところが、建設アスベスト訴訟では国は14連敗しても開き直って最高裁の統一判断が必要だと言い続けた。その間に何百人も亡くなっている。こんなにひどい解決先延ばしは日本の裁判史上、類をみない。そういう経緯を踏まえた謝罪になってない」

原告団らは2月2日付けで田村大臣が京都に訪問したうえでの原告に対して謝罪することや補償・基金づくりに向けた協議のテーブルにつくことなどを求めた国への要求書を送付している。

福山弁護士は形だけの謝罪では意味がないと強調する。

「まずは京都訴訟の原告に謝罪してもらうこと。あとは(約1カ月前に直接謝罪した)東京1陣の関係でいうと、謝罪しただけじゃなく全面解決に向けた協議の場を持つように指示したはず。

京都では謝罪の意思表明は会見でされたが、協議の場を持つという指示をされたということは、会見概要を見る限り載ってない。

協議の場を持つようにといったのは東京1陣だけでなく全国という意味と受け止めているが、実際にどうなのか明確でない。すでに2陣訴訟、3陣訴訟が各地で提起されていますから。そういう原告に対して裁判続けてあと何年かかるかわからない裁判をそれぞれやれというのか。

すでに最高裁でほぼ枠組みが固まった以上、それを前提として早期の和解解決や被害者救済の基金創設が望まれる。そのためにも協議の場を早急に持っていただきたい。田村大臣などトップのイニシアチブが求められる」

田村大臣は12月の会見で与党の議員連盟にも言及し、「真摯にお話をお伺いさせていただく中で、どのような対応があるのかということは検討していきたい」と述べていたが、その後どうなっているのか。田村大臣をはじめ政治の側の対応が問われている。