◆軍用の食糧を放出して配給に回すも不足

――飢えの広がりに対して政府はどう対処していますか?

B 「無職者」(職場を無断で離脱した人)の取り締まりを、あれだけ厳しくしていたのに、最近では生活が苦しくて出勤できない人が多いので、欠勤取り締まりはあまりしなくなりました。

中国から食糧支援が入って来ると(当局)言っています。ただ、それが我われの所まで来るのに時間がかかるので、先に軍糧米を放出しているそうです。4月に一部の企業は軍糧米で配給しましたが、たった3~5キロほどしかなかった。それでどうやって1カ月生きていきますか? 商売もうまくいきません。「飢え死にせず、何としても生き残ろう」というのが(住民間の)呼号(スローガン)になりました。

 

――市場はどうなのですか?

B 農村動員期間なので、市場は晩の6時から8時の間だけ開けていますが、商売がうまくいかないので人は多くありません。食べ物商売も衛生検閲が厳しくなって稼げなくなりました。
※自宅で作ったパンや餅、グクスと呼ばれるトウモロコシ麺などを市場で販売する。

市場管理所に衛生確認証を提出しなければなりません。病院で発行するのですが、人民班の確認印まで全て押されて初めて食べ物を売ることができます。コロナ、伝染病でないと確認されないと売れないのです。特に肝炎、結核などに対して厳しいです。確認書は賄賂を渡せば作れるのですが、バレたら承認してくれた人たちが問題になるから、慎重になっています。

◆市場での食糧販売禁止措置は若干緩和

――今年に入り市場での食糧の陳列商売が禁止になりましたが、今はどうですか?

B 米、トウモロコシの販売が完全禁止になったのが、最近はごく少量なら目をつぶってもらえるようになりました。問題は、個人が食糧を仕入れる所が少なく、価格も市場管理所で定める価格で売るという条件なので、商売人は市場ではなく家で取引する場合が多いです。家で売るのも10キロ未満までです。市場の糾察隊、担当安全員(警察官)が随時チェックするので、市場に大量に食糧を卸すようなことは想像もできません。

※糾察隊は民間人で構成する取り締まり専門チーム。風紀の乱れや秩序違反を摘発する。

◆当局は餓死と判定せず病死として処理

――周辺で、飢えで死亡する人はいますか?

C  食糧事情は非常に深刻です。死ぬ人がいます。私の町内でも栄養失調で寝たきりになって死んだ人がいます。その家には塩一粒すらなかったそうです。葬式の後、お棺もなく麻袋に包んで(家から)送り出していました。

物乞いをする人も増えたし、今にも死にそうな人も多いです。飢え死にしたのにそうだとは言いません。死亡診断書には結核、喘息、肝炎などと書いて、餓死とはしないのです。

※餓死者の発生は役人や幹部の責任問題になりかねないため、それを恐れて「病死」と判定するのかもしれない。昨年夏にコロナが拡散して多くの死者が発生した際、役人や医師はコロナによって死亡したと判定することはほとんどなかったという。

 

――飢える人に対し政府はどんな対応をしていますか?

C  栄養失調になってむくみが出ている人の家に、(地区の)担当医が行って点滴をしてあげることがあります。でも、食べられずにそうなったのに、点滴を打ったぐらいで生き延びられますか?

 

――飢える人が増えてどんな現象が起こっていますか?

C 私の町内は空き家が増えました。食糧が足りないので、職場で時間をもらって食べ物を調達に行くと言って出かけるのですが、どこかで死んでもわかりません。農村にめぐんでもらいに行く人が多いんですが、農村も(厳しい)状況は似たようなものでしょう。

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