(参考写真)鴨緑江辺で沐浴、洗濯する若い国境警備兵たち。あばらが浮いた兵士も。2017年7月平安北道朔州郡を中国側から撮影石丸次郎

金正恩政権は先月末に平壌で盛大な軍事パレードを挙行したが、北部地域に駐屯する軍部隊では食糧供給量が不足して、一般兵士の間に栄養失調が蔓延していることが分かった。アジアプレスの複数の取材協力者が兵士と会って事情を聞いた。(カン・ジウォン/石丸次郎

◆「味噌以外おかずありません」

取材協力者たちは咸鏡北道(ハムギョンプクド)と両江道(リャンガンド)で7月後半から8月初旬にかけて、直接兵士に会って話を聞いた。

ある部隊の20代後半の兵士は、「トウモロコシの粉に『安南米』(長粒米)を混ぜたものが出ているが、量は食器の半分にも満たないくらいだ。味噌以外に副食は何もなく、部隊の半数以上が虚弱状態(フラフラ)だ」と、取材協力者に述べた。

また、農村に援農作業と警備のために駐屯している部隊の兵士は、「小麦と大麦が出ているがまったく足りていない。それでも原隊よりずっとましだ」と別の協力者に述べた。腹を空かせた兵士たちは川で魚を捕まえたり山菜を採ったりしてしのぎ、農民たちがおかずを分け与えていたという。

◆兵士によるタカリ、盗みが増加

軍部隊への食糧供給が悪くなったのは4月頃からだ。一般住民の間で脆弱層に餓死する人が増え始めたと時期と一致する。

北朝鮮では7月に入って新型コロナウイルスに対する防疫措置が緩和された。それまで軍の将兵が一般住民と接触することは厳しく制限されていたが、緩和された。すると待遇が悪化した兵士による犯罪も増えた。

都市部では兵士が住民に言いがかりをつけて、ゆすり・タカリ、物品を奪う事件が頻発している。軍民関係の悪化を憂慮する当局は、兵士の夜間の外出を統制したり、不良行為を犯した兵士が所属する部隊員に連帯責任を問うたりするなど、規律強化で臨んでいるという。関連して、協力者は次のように述べた。

「7月に両江道である部隊の兵士が鶏を盗んで食べた事件があって、中隊長が1週間謹慎処分になった。『ばれないように盗め』が部隊の中で合言葉になっていると、兵士が言っていた」

アジアプレスの取材協力者が話を聞いた兵士は少数であり、駐屯する地域や部隊によって待遇に差がある可能性がある。

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

 

 

 

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