◆「国全体が『賃加工』に総動員されている」

わずか4年足らずで、委託加工品が主たる輸出品になったのは、中国企業の需要に加え、コロナ以降の個人の経済活動に対する統制のせいで現金収入が激減した都市住民が、仕事を求めて殺到していることがある。企業に勤めて得られる労賃(月給)はハイパーインフレで目減りがひどく、それだけでは到底、食べいけなのだ。

「まるで国全体が総動員されて、中国人のために下請け作業をしているかのようだ。少し余裕のある人を除けば、カツラ、帽子、編み物、人形作りなど、賃加工をやらない者はいない。やりたい人が多すぎて、毎日仕事があるわけではなくなった」

取材協力者は、現状をこのように説明した。

一方で、無理な内職作業で健康を害する人が続出していると、協力者たちは口を揃える。昼は職場に通いで、退勤後は時間が許す限り自宅でカツラ編みの作業をする。学校帰りの子供まで作業に加わるというから、「扶養」身分の女性(主婦)なら、一日中作業するケースも相当あるに違いない。

停電が茶飯事なため、暗い室内で非常に細かい手作業を長時間続けて眼を悪くする人が非常に多いそうだ。協力者たちは、「健康な人でも1~2カ月やったら体が(目が)ボロボロになる」「街で眼鏡をかけた女性がとても増えた。賃加工で苦労しているのが分かる」
と同情を口にした。

ただ、「賃加工」の収入が家計の要になっているのは事実で、「そういう仕事があるだけでもありがたいという人もいる」という。

◆つけまつ毛、編みぐるみ、アクセサリーも

カツラの他にも、つけまつ毛やアクセサリー、置物作りの「賃加工」もある。下の写真は、北朝鮮で加工された「編みぐるみ」だ。北朝鮮北部地域で協力者が撮影して送ってきたものだ。間近で見ると、縫い目が整っており丁寧に仕上げられていることが分かる。いずれも完成単価は0.3中国元(6.9円)だという。

北朝鮮女性が作ったチューリップの編みぐるみ。編み目が揃って丁寧に作られている。2026年6月、北朝鮮北部地域で協力者撮影
ひまわりに可愛らしい顔がついている。2026年9月初旬の価格では、これを7個作ってトウモロコシ1キロをようやく買える程度だ。2026年6月、北朝鮮北部地域で協力者撮影
これも北朝鮮で加工された花飾りだ。完成単価は0.2中国元(4.6円)だという。2026年6月、北朝鮮北部地域で協力者撮影

なお、アジアプレスの調査は5~6月のもので、7月以降に数値が変動している可能性がある。調査地域は両江道と咸鏡北道だけであり、他地域でも同様に収入を求める住民が「賃加工」に殺到している可能性が高いと見るが、確かな情報に接することができなかった。

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

北朝鮮地図 製作アジアプレス

 

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