東京メトロのずさんな設備管理により8月9日、地下鉄半蔵門駅(東京都千代田区)ホームにアスベスト(石綿)が降り注ぐ“事件”が起きた。ところが大気汚染防止法(大防法)を所管する千代田区は「法の対象外」と明言。指導もない状況という。いったいどういうことなのか。(井部正之)

半蔵門駅のアスベスト飛散をめぐって千代田区が東京メトロに申し入れをしたとの発表。だが、区は修繕作業時の大気汚染防止法違反を指導すらしていない

◆石綿飛散でも大防法違反なし

同社によれば、8月9日午前5時55分ごろ、半蔵門駅ホームの永田町駅側(南側)で「ホコリが飛んでいるのを乗務員が発見」(広報部)した。天井の空調吹き出し口計11カ所から、換気設備の継ぎ手部分の布地が一部破損(推定縦約40センチ×幅約30センチ×厚さ約3ミリ)し、送風機に巻き込まれて粉々になった「糸くずがホームに落下」した。11日に「落下した糸くずがアスベスト含有素材」と発表された。

同社は発表で明記せず、筆者が取材時に聞いてもはっきり回答しないのだが、破損した「換気設備の継手部分の布地」は石綿に少量のポリエステルなどを混ぜて石綿糸を紡ぎ、それを織った「石綿布」と見られ、石綿含有率は80~99%に達する。つまり、「糸くず=ほぼ石綿」であり、少なからぬ駅利用者がいる半蔵門駅のホーム上に「石綿が降り注いだ」ことになる。当然、そこに居た人びとは石綿を吸った可能性がある(詳細は8月22日アジアプレス・ネットワークなどに掲載の拙稿「半蔵門駅ホームにアスベストが降り注ぐ 東京メトロが明かさない真相」参照)。

ホームに石綿が飛散した9日は、乗務員から連絡を受けて、同社社員が午前7時2分から現地調査を開始。8時40分までにホームの清掃のほか、吹き出し口3カ所について、「換気設備の一部停止、破損箇所の修繕及び落下防止処置」を終えたという。

ところがこの段階では石綿含有が把握されておらず、立ち入り禁止や石綿のばく露防止の措置などはいっさい講じられていない。同社によれば、石綿含有を確認したのは、8月10日午後3時30分という。

ようやく11日になって、始発から渋谷駅~九段下駅間の運転を見合わせ、同駅の営業を停止。石綿除去の専門業者によりホーム上などを清掃などが実施された。

一連の対応について、大気汚染からの国民の保護などを目的とする大気汚染防止法(大防法)に基づく指導権限を持つ千代田区に話を聞くと、「(石綿が)飛散、落下したのは事実かと思います」(環境政策課)と認めた。

一方、大防法に基づく指導状況を尋ねると、「(建物などの)解体や補修じゃないので、そういう(指導などの)段階じゃない」(同)と回答した。

じつは大防法は、「特定粉じん排出等作業」として石綿を含む建材などが使用されている「建築物その他の工作物を解体し、改造し、又は補修する作業」だけを規制。これらに該当しないため、落下して石綿が飛散しても「法の対象外」(同)なのだ。

★新着記事