公安警察の市民監視・個人情報収集を、人格権としてのプライバシー侵害、「個人情報をみだりに収集・保有されない自由」(自己の個人情報をコントロールする権利)侵害、「集会・結社・表現の自由」侵害として、その違法性・違憲性を認めた「大垣警察市民監視違憲訴訟」の名古屋高裁判決(2024年9月13日)。それは、高市政権が狙う「スパイ防止関連法制」による市民監視強化とプライバシー侵害、集会・結社・表現の自由侵害などの危険性を、広く訴えてゆく確かな足場となるものだ。(吉田敏浩/写真はすべて筆者撮影)

◆個人情報を収集され情報操作される恐ろしさ

「大垣警察市民監視違憲訴訟」原告のひとりである近藤ゆり子さん(77)は、裁判の原告陳述書で次のように強調していた。

「この事件によって、市民が本人の同意もなく、監視され、情報を取られ、真実とは異なる人物像を作られて利活用されていることが明らかになった。しかし、その根拠も基準も中身も闇の中である。これでは人々は自由闊達に『もの言う』ことができない、人と繋がり信頼を深めていけない。憲法が謳う個人の尊厳は守られない、自由が壊される」(『大垣警察市民監視事件』「もの言う」自由を守る会編 風媒社 2025年)

「公安警察は市民運動・住民運動を危険視する色眼鏡で私たちの情報を集め、それを元にバイアス(偏見、意図的な誇張)をかけてシーテック社に情報提供し、私たちを危険人物視するよう仕向けていました。このように市民運動・住民運動つぶしの情報操作、世論工作をするのに都合のいい人物像、虚像を作り上げて利用していたのです。しかし、名古屋高裁判決が確定しても、警察側は私たち原告に対して謝罪もしていません」と近藤さんは、反省のみられない警察側の対応に憤りを表す。

「大垣警察市民監視違憲訴訟」の原告となった近藤ゆり子さん(2026年5月13日撮影)

そして近藤さんは、「名古屋高裁判決もこのような公安警察の情報操作に着目し、公権力による個人情報の収集が虚像形成から冤罪に結びつく危険性を指摘している」と語る。同判決は次のように述べている。

 

【虚像形成・冤罪】「公権力が、本人の知らないまま、特定の個人に関する個人情報を……多数収集してこれらを集積し、分析し、保有するなどすれば、当該個人の実際の人間像 (人物像)とは異なる人間像がその中で形成され、これが独り歩きして、誤った個人情報に基づく措置等を行ってしまう可能性がある。……このような個人情報の収集及び保有等を警察組織が行った場合には……正確性を欠く情報……に基づき、監視の対象とされたり、犯罪捜査の対象として取り上げられたりして、誤認逮捕等の身柄拘束が生じる可能性も否定できない」(判決本文P49) 

「国家情報会議・国家情報局ができると、総合調整という強力な権限のもと、公安警察など各情報・諜報機関が収集した情報が集約され、それぞれの機関の間で情報が共有されることになります。名古屋高裁判決が指摘したように、公権力による個人情報の収集が、虚像形成から冤罪に結びつく危険性も増大します。『スパイ防止法』がつくられたら、国策に反対する者は外国勢力と結びついていると誹謗中傷する排外主義の風潮とも連動して、『スパイ冤罪事件』も起きかねません」と、近藤さんは警鐘を鳴らす。

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