高市早苗首相は今年4月17日、衆議院内閣委員会の国家情報会議設置法案の審議で、「政府の政策に反対するデモや集会に参加していることのみを理由として、『普通の市民』が調査対象になることは想定し難い」と答弁した。しかし、あくまでも「想定し難い」と述べただけで、調査しないと明言したわけではない。(吉田敏浩/写真はすべて筆者撮影)

◆自衛隊の情報保全隊による市民監視・情報収集

この答弁は、調査すなわち監視・情報収集の対象にするかどうかは、ケースバイケースで判断することもあり得るといった含みを持たせた巧妙な言い回しである。

また「普通の市民」という概念もきわめて曖昧だ。普通なのか普通でないのかを、いったい誰がどのように判断するというのだろうか。当局の恣意的な判断にゆだねられてしまうおそれが高い。この首相答弁が各情報・諜報機関による市民監視・情報収集の歯止めになるとはとうてい思えない。

実際、アメリカによるイラク戦争が起きた2003年から04年にかけて、自衛隊イラク派遣に反対する全国各地のデモや集会に参加していた市民たちが、陸上自衛隊情報保全隊(現自衛隊情報保全隊)から監視・情報収集されていた事例もある〔アジアプレス・ネットワーク連載「『スパイ防止法』は市民監視法になる」吉田敏浩(10)~(12)参照〕。

仙台市で開かれた「自衛隊の国民監視差止訴訟」の原告・弁護団・支援者などが参加した集会(「自衛隊の国民監視差止訴訟を支援するみやぎの会」主催)(2008年6月撮影)

まさに「政府の政策に反対するデモや集会に参加していることのみを理由として、『普通の市民』が調査対象」すなわち監視・情報収集の対象にされたのである。前出の高市首相の答弁がいかに当てにならないかがわかる。

この陸上自衛隊情報保全隊による監視・情報収集の内部文書に実名が記されたり、監視・情報収集の対象となった団体の集会やデモなどに参加したりした、青森・岩手・秋田・宮城・山形・福島の東北6県在住の市民たちが原告(総勢107人)となり、2007年10月5日、「自衛隊の国民監視差止訴訟」を仙台地裁に提訴した。

国(政府)を相手取り、人格権、プライバシーの権利、知る権利、言論・表現の自由、集会・結社の自由、思想良心の自由、平和的生存権を侵害され、精神的苦痛をこうむったと訴え、
情報保全隊の監視活動の差し止めと損害賠償(国家賠償請求)を求めたのだった。

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