◆市民監視・情報収集はプライバシー侵害
そして、仙台地裁判決(2012年3月26日)と仙台高裁判決(2016年2月2日)でそれぞれ、情報保全隊による情報収集は、人格権の侵害、自己の個人情報をコントロールする権利侵害、プライバシー侵害であるとして、違法性・違憲性を認め、一部の原告に関し国に損害賠償を命じる判決が下された。
ただ差し止めの訴えまでは認められなかった。人権侵害の被害を受けた原告らに対する政府側からの謝罪もいまだになされていない。
今年4月17日、衆議院内閣委員会の国家情報会議設置法案の審議で、共産党の塩川鉄也議員が、衆議院本会議での同法案の質疑における高市首相の「各省庁の情報活動は適切におこなわれている」という答弁に関連し、前出の陸上自衛隊情報保全隊による市民監視・情報収集事件について、プライバシーや表現の自由の侵害で「仙台高裁が国に賠償を命じている」が、「政府として当事者に謝罪したか」と質したところ、高市首相は謝罪したかどうかについて一切答えなかった(『しんぶん赤旗』2026年4月18日)。

つまり政府は、「政府の政策に反対するデモや集会に参加」していただけの市民を、監視・情報収集の対象としていたことに謝罪も、反省もしていないのである。高市首相の「各省庁の情報活動は適切におこなわれている」という答弁は、説得力を欠く。そのような政府が、市民監視・情報収集の強化、息苦しい社会につながる国家情報会議・国家情報局を創設した。
2021年6月8日の参議院内閣委員会で、山添拓議員(共産党)が前出の仙台高裁判決に言及したうえで、情報保全隊の「情報収集活動はいまはやめたのか」と質問したところ、松川るい防衛大臣政務官(当時)は、正面から答えず、はぐらかすようにこう答弁した。
「〔情報保全隊は〕業務を防衛省の所掌事務の範囲内でおこなっているが、個別具体的な活動内容については、明らかになった場合、支障をきたすことがあるから、お答えは差し控える」
「具体的な活動内容」を明かせない自衛隊情報保全隊の監視・情報収集の活動は、依然として続いているとみられる。(つづく)
吉田敏浩(よしだ・としひろ)1957年、大分県出身。ジャーナリスト。著書に『ルポ・軍事優先社会』(岩波新書)、『「日米合同委員会」の研究』(創元社)、『横田空域』(角川新書)、『昭和史からの警鐘』(毎日新聞出版)など。























