◆ウクライナ軍が使う自衛隊車両も標的に

有線式光ファイバーケーブル搭載の小型自爆ドローンの登場は、ドローン戦争に新たな局面をもたらした。無線妨害装置(ジャマー)を突破し、次々と破壊される車両。ウクライナに送られた自衛隊車両もまたその餌食となっている。いかにドローンを活用し、同時にいかに防ぐか。ドネツク州前線地帯で、有線式ドローンの運用現場を取材した。全4回 2/4(取材・写真:・玉本英子) 

 

【動画】 ウクライナ軍が使う自衛隊車両に対するロシア軍KVN自爆ドローンの待ち伏せ攻撃。道路はドローン対策の防護ネットで覆われているが、ネットの中にまで侵入し、連携して攻撃している。ドローンに気づいた兵士たちが車両を置いて逃げていく様子が映っている。 (2025年・SNSより)

◆待ち伏せ戦術(ザサーダ)

昨秋、ある映像がSNSで出回った。ウクライナに送られた自衛隊車両が、ロシア軍の自爆ドローンの待ち伏せ攻撃にさらされる瞬間だ。前回報告したロシア軍の有線式光ファイバードローン「ノヴゴロドのヴァンダル公」(KVN)2機が連携し、自衛隊車両を狙っている。ドローン対策で道路全体を覆う防護ネットの中に侵入した機体が上空から兵士に襲い掛かると同時に、道路わきに潜んでいた別の機体が浮上して車両に突っ込もうとする瞬間だ。

待ち伏せ戦術は、ロシア語でザサーダ、ウクライナ語でザシードカと呼ばれる。路肩や屋根の上にいったん着陸してバッテリー消費を抑える。高い高度からエリア全体を俯瞰する偵察ドローン班からの情報をもとに、目標車両が近づくと一気に浮上して突入する。

 

【動画】 これは別の場所で、ロシア軍自爆ドローンの攻撃を受けた自衛隊車両。同じ車両が繰り返し攻撃されたとみられる。海に囲まれた日本において、有事の際に自衛隊に同様の小型自爆ドローン攻撃が想定されるかは別にしても、将来的には戦車の装甲や防護もドローン対策を意識したものとなるかもしれない。(2025年11月・ロシア国防省映像)

 

ウクライナ軍・第24独立機械化旅団・無人機中隊のリース操縦士が説明する。

「有線式ドローンは15km以上の距離を光ファイバーケーブルをつないで飛ぶ。いったん飛ばしたらケーブルは巻き取れないから戻ることはない。無線式偵察ドローンが上空で目標を選定し、その指示のもとに機体を移動させる。待ち伏せして複数の機体で2波、3波で突っ込むとより効果的だ」

車両が逃げる先にも、別のドローンが待ち構える複合攻撃もある。適当に飛ばしていて敵がいたら狙うのかとも思っていたが、そうしたことはまずなく、攻撃はシステマチックだ。無線式、有線式を組み合わせて、それぞれの利点を活かした戦術が組まれているという。

ウクライナ軍・第24独立機械化旅団・攻撃無人機中隊のリース操縦士。光ファイバーケーブルタンクを装着した有線式ドローンを手にしている。このサイズのケーブルタンクで航続距離は15km。機体にタンク、弾頭、バッテリーを搭載すると、総重量は6kgほどになる。(2025年6月・ドネツク州前線・撮影・玉本英子)
ロシア軍が「怒涛の80」として公開した映像。T-80BVM戦車と思われる。ドローン対策で全体がハリネズミ化され、異様な車体になっている。(2026年2月・ロシア国防省映像)

◆キルゾーンの幅が拡大

これまでは、両軍が対峙する接敵ラインを挟んで、ウクライナ軍側10km、ロシア軍側10km幅が双方にとってキルゾーンだった。無線ドローンが飛来するこの範囲内では、死の確率が格段に上がる。有線式の登場で、15~20km 両幅にキルゾーンが広がった。東京だと四ツ谷から直線距離で羽田空港や東京ディズニーランドまでがそれぞれ15kmにあたる。冬よりも春・夏のほうがバッテリーの持ちがよくなるため、季節によっても飛行圏が変わる。

前線を行き交う軍用車両はジャマーを載せ、周囲を金網ケージで覆う。幹線道はドローンが侵入しないよう、何キロにもわたって道路全体が防護ネットで覆われるようになった。異様な光景が広がる地帯になっている。

ロシア軍が15kmまで迫ると、前線地帯付近にいる子どもとその保護者に強制避難命令が出される。その目安のひとつが、ドローンが到達する距離でもある。光ケーブルの巻き上げピッチをより精緻にした、40km以上飛行できるタイプが登場し、軍部隊の動きにも制約が出ているうえ、住民も避難判断にも影響がおよぶ。(地図作成・アジアプレス)
手際よくドローンを整備するリース操縦士。侵攻前は、キーウでベンチャー企業の金融部門マネージャーをしていた。電子工作の経験はなかったが、実戦のなかで習得したという。(2025年6月・ドネツク州前線・撮影・玉本英子)

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