◆標的破壊の成功率は約8割
目の前で撃ち合う歩兵に比べ、ドローン部隊は遠くからモニター画面を見ながらゲーム感覚で機体を飛ばして敵を狙っているように見えるが、実際は容易ではない。
リース操縦士はこう話す。
「我々は通常、3人チームで動く。ドローンをコントロールする操縦士、偵察部隊と連携して標的を追うスポッター、次の攻撃のために弾頭やバッテリーを装着する装備担当。何十もの機体、いくつもの弾頭とともにつねに前線を移動する。ドロ-ン製造拠点はロシア軍にとって最優先の破壊目標のひとつだから、いつミサイルが飛んでくるかわからない。いま、あなたと私がいるこの場所のことだ」
これは無線式で、アンテナがついている。この取材時点で運用比率は、無線7割・有線3割だったが、有線が増えていくということだった。ただ有線式は重くて速度が出ないため、無線式と複合させて運用するという。(2025年6月・ドネツク州前線・撮影・玉本英子)標的を破壊する成功率はどれくらいなのだろうか。
「1日あたり一人のオペレーターが使いこなせるのは最大で20機ほど。うち16~18回は成功する。ロシア軍側もほぼ同じだろう。ゆえに我々の損害もまた大きい」
◆3Dプリンタでパーツ即製
何十もの機体が山積みされた奥のブースに行くと、3Dプリンタが3台並んでいた。ブオーン、グググッと小刻みな機械音を出しながら、ケースのなかで成型作業が進んでいる。
「弾頭に使うパーツを作っているところだ。3Dプリンタがあれば、どこにいてもたいていのものは加工できる」
「使えるものはなんでも弾頭になる」と、この日は擲弾を加工していた。歩兵戦闘車BMP-2に装備されている自動擲弾銃AGS-17の擲弾で、上空からの投下用にする。(2025年6月・ドネツク州前線・撮影・玉本英子)
3Dプリンタで出来上がったばかりのパーツ。擲弾を3つ連結する固定パーツで、束ねた擲弾の隙間にC-4プラスチック爆薬を詰めれば強力な投下弾頭に。(2025年6月・ドネツク州前線・撮影・玉本英子)
3Dプリンタがあれば、現場で様々な部品が即座に製造できる。ロシア軍もまた同様に3Dプリンタを前線に導入している。(2025年6月・ドネツク州前線・撮影・玉本英子)リース操縦士が、出来上がったばかりのパーツを見せてくれた。
歩兵戦闘車BMP-2に装備されている自動擲弾銃AGS-17の擲弾を3つ連結する固定パーツで、束ねた擲弾の隙間にC-4プラスチック爆薬を詰めて強力な弾頭にする。
「1発が何千ドルもする砲弾よりも、400ドル(=6万3000円)ほどの小さなドローンが正確に標的を破壊し、十分に威力を発揮する。戦争は、より安価なものとなった」
ドローンの機体に小型散弾銃を搭載したタイプを開発中だった。敵の機体にハンタードローンが体当たりして落とすことがあるが、空中からの散弾発射なら自軍の機体は帰還できる。(2025年6月・ドネツク州前線・撮影・玉本英子)
散弾銃搭載のドローンの実験画像。「ずっとこんなことばかりしなければならないなんて大変ですね」と言うと、「ああ、こんなことばかりしている。我々も、そしてロシア軍も。戦争だから」との答えが返ってきた。(2025年6月・ドネツク州前線・撮影・玉本英子)◆散弾銃で撃ち落とす
彼は言う。
「有線式ドローンに即座に対処できるのは、いまのところ散弾銃ぐらいだ」
ジャマーが無力化されたいま、両軍とも前線の部隊は散弾銃を装備するようになった。自動小銃で撃っても、高速で飛び回るドローンを遠距離から撃ち落とすのは至難の業だ。広範囲に弾丸が飛散する散弾銃を使えば、撃ち落とせる確率も上がる。
ドローン対策でウクライナ軍部隊に導入が進むセミオートの散弾銃(ショットガン)。散弾が広範に飛び散ることで、ドローンを仕留める。写真はウクライナ製ブルパップ式散弾銃・サファリHG-105M。無線式ドローンに対して開発されたこれまでの電磁パルスガンは、有線式には効果はない。(2026年2月・ウクライナ軍・第24独立機械化旅団写真)
これはイタリア製の散弾銃、ベネリ。日本でも防犯用に使われる携帯式のネットランチャーはドローン対策に使えそうなのではと聞いたら、飛距離が短いうえに、1発はずしたら連射できないから無理ということだった。機体が高速で突っ込んでくる上に、発射したネットに触れて爆発するので、数十メートルの距離が確保できないと爆片を浴びる。(2026年2月・ウクライナ軍・第24独立機械化旅団写真)これまで無線式ドローンの一部はジャマーで阻止できた。ところが有線式の登場でジャマーが効かなくなり、突っ込んでくる機体への対策が散弾銃。ミノフスキー粒子ゆえに、モビルスーツが近接戦を強いられるようになったガンダムの世界を見ているかのようだ。
トロッコを移動中のトラックの揺れる荷台に見立てて、長いレールの上を前後に走らせ、散弾銃で模擬ドローンを撃つ訓練が導入されている。21世紀の戦争で「アナログ的な対処」を強いられている。(2025年・ウクライナ軍・第242部隊訓練センター映像)