◆監督署は規制対象と説明

興味深いのは、労働者保護の石綿則で今回の現場を管轄する中央労働基準監督署が異なる見解だったことだ。

指導状況を尋ねると、同監督署は通例どおり、「どういった対応をしているかは申し訳ないがお答えできない」との回答。だが一般論として、同社の修繕作業は「石綿の切断などの作業(石綿則第13条)に該当」として、複数の違反の可能性があると認めた。

同監督署によれば、石綿則で定められた事前調査・分析(第3条)、作業計画の作成(第4条)、粉じんの発散源を密閉する設備などの設置(第12条)、切断など作業時の湿潤・飛散防止(第13条)、防じんマスクなど保護具の使用(第14条)、作業現場の立ち入り禁止(第15条)、石綿作業主任者の選任(第19条)、特別教育の実施(第27条)、作業の記録(第35条)、作業計画による作業の記録(第35条の2)、特殊健康診断の実施(第40条)、診断の結果の記録(第41条)などに抵触するおそれがあるという。罰則もあり、起訴され有罪になれば、「6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」である。

労働者保護の規定を除くとほぼ同じ規制のはずの石綿則で、監督署が明確に飛散防止措置が必要となる修繕作業と判断していることが重要だ。改めて千代田区の対応が間違っていたことが裏付けられたといえよう。

破損箇所や石綿布の脱落のあった排気口はなにを使って、どのように補修・修繕されたのか同社に尋ねたが、「専門機関の協力のもと継続して検証」中で、「現時点では事実関係等を確定できておらず、個別の回答は差し控え」(同)とした。

法違反の状況は、「管轄の労働基準監督署や弁護士に対し、関連法令の抵触やそれらに基づく対応の必要性について判断いただくため、報告手続きを実施している最中です」(同)と答えなかった。実際にどの程度詳細な説明が区や監督署に対してされているかは不明だ。

また同社は今後の対策として、次の3つを挙げる。

・同種箇所の緊急点検。それ以後も点検を強化
・不具合が見られた場合、速やかにアスベストを含まない部品に交換
・専門家による本件に関するアスベストの飛散量、健康への影響等の調査

しかし破損箇所の今後の修繕工事における対策の内容も聞いても、同様に「個別の回答は差し控え」(同)という。

石綿がホーム上に降った8月9日8時40分ごろまでに半蔵門駅を利用したのは約1500人。8月9日~10日の駅利用者は約6万4000人。それだけの人びとが石綿にさらされた可能性がある。にもかかわらず、区だけ甘い判断で指導すらしないのでは、権限を放棄していると批判されても仕方あるまい。そんな弱腰の対応で区民や利用者の納得が得られるとは思えない。

【関連写真】アスベストを高濃度に含む可能性があり「石綿布」とみられる破損箇所など

★新着記事