◆「修繕」でも対象外と区が主張
9日午前の石綿粉じんの清掃においても、適切な飛散防止対策がなかったことを同社は認める。しかしこの清掃も建物などの解体・改造・補修でないため、大防法の対象外だ。明らかな規制の不備だが、現状で法違反は問えない。これは労働者保護を目的とした労働安全衛生法(安衛法)石綿障害予防規則(石綿則)でも同様だ(この件は稿を改める)。
だが少なくとも同日の「破損箇所の修繕」は法で定める補修作業だろう。実際に同社の説明する破損した「石綿含有素材」の石綿布にも触って一部を撤去のうえ、破損箇所をふさぐなどの措置をした以上、明らかに補修であり、規制対象のはずだ。
その場合、石綿の事前調査や作業時の湿潤化などの飛散防止が規定されているが、石綿含有の認識がなかったことから対応できておらず、同法の作業基準違反の可能性がある。
ところが同区は「現時点では大防法の改修にあたらない」(同)と回答する。
石綿を含む材料に触れて補修しているのになぜ「建築物その他の工作物を解体し、改造し、又は補修する作業」に該当しないのか。そう質すと、「その(補修の)時点で(石綿が)入っているかわからなかった。緊急避難的な措置なので」(同)などと新たな解釈を打ち出した。
大防法には緊急時なら法を無視してよいなどの規定はない。そもそも3カ月前の5月14日の定期点検で破損は確認され同社に報告されている。また、分析により7月6日に石綿含有も判明している。法に基づく対応をする時間は十分あったはずだ。
大防法を所管する環境省に聞くと、やはり石綿布の落下時における石綿飛散や清掃は「解体などの工事ではないので違反は問えない」(環境管理課)と説明。
修繕については、一般論で個別の判断権限は自治体にあると前置きしつつも、「改造・補修に該当するのであれば、石綿の事前調査をせず着手した場合は大防法に抵触する」「除去しないで、上からテープなどの固定する場合でも、建材には触れているのであれば改造・補修に該当する可能性があり、石綿が飛散しないよう湿潤化のうえで手ばらしが必要になる」(同)と区の見解を否定した。
また同省は、「既存の塗装の上に新たに塗装を塗る作業等、現存する材料等の除去は行わず、新たな材料を追加するのみの作業」など一部の「軽微な作業」は大防法の対象外とも説明する。これは家庭などでのDIY作業などを考慮した除外規定がいくつか例示されているにすぎず、判断基準もない。
そもそも今回は破損した石綿布の一部撤去や破損箇所の補修があるとみられ、該当するとは考えにくい。同省はその除外規定の該当性を説明できなかった。少なくとも除外規定が記載されている厚生労働省の解説資料に今回の作業が明らかに該当すると見られる例示はない。これは環境省も認めることだ。
仮に除外規定に該当する可能性があるとしてもすでに述べたように判断基準はなく、自治体のさじ加減しだいである。どのように規制の対象外なのか明確に説明すらできない以上、今回の千代田区の対応は、法違反を見逃す甘い対応といわざるを得ない。
今回の問題を受けて区は、大防法の規制対象外のため、同社に「区民の安全・安心の観点から適切な対応を講じるよう申し入れた」として、19日に区のウェブサイトで発表。区は「区民に不安を与える観点からしっかり検証してほしい」と話すのだが、適切な指導をしないままの現状では、人任せが過ぎよう。まずは法令上の指導や報告徴収をするのが筋のはずだ。少なくとも法執行をサボっていうことではないだろう。























