中国で相次いで暴露される官僚や共産党員のみだらな行為。その裏には彼らが握る権力がある。手にした力を背景に傍若無人に振る舞う官僚たち。取材から倫理観を失った彼らの姿が浮か上がった。3回シリーズで伝える中国官僚組織の腐敗の実態の最終回。(アイアジア/宮崎紀秀)

「妻を官僚に奪われた」と訴える張濤さん(2014年4月7日内江市にて撮影アイ・アジア)

「妻を官僚に奪われた」と訴える張濤さん(2014年4月7日内江市にて撮影アイ・アジア)

●「党幹部に妻を奪われた訴える男性

今年(2014年)4月。「地元の官僚に妻を奪われた」と訴える男性を取材するため、私は四川省に向かった。

北京から早朝の飛行機で、四川省の省都・成都まで2時間半。さらに車で2時間以上走ると目的地の内江市に到着した。指定された住所を探すと、中流階級が集まっていると思われるような小奇麗なマンション群の一角だった。その一室に張濤さん(37歳)を訪ねた。

張さんの家は、2LDKはあろうかというものだった。がらんとした広さがかえって寂しさを感じさせた。リビングに通されると、果物の食べ残しがテー ブルの上に残されたままになっているのが目に入った。張さんは、そのリビングでソファに腰掛け、深く長いため息をつくと、悲痛な表情で身の上を語り出し た。

話は3か月前の今年1月にさかのぼる。その日、張さんが家でゲームをしていたところ、10年寄り添った31歳の妻から突然、別れ話を切り出されたと いう。妻 とは喧嘩もしたことはなく、あまりの唐突さに張さんは面食らった。妻は、張さんが出稼ぎで家にいない生活に慣れてしまったので子供を連れて一人で暮らした い、などと離別の理由を述べたが、張さんはその言葉を俄かには信じることが出来なかった。

突然の妻の心変わりに、何か思い当たる節はないか考えた張さんは、ふと、去年生まれた二人目の子供があまり自分に似ていないことに思い当たった。 <もしかすると他人の子供なのではないか> そう疑いを抱いた張さんは子供の血液型を検査した。張さんと妻の血液型は共にO型。子供は、二人の間からは生 まれるはずのないA型だった。その子は自分の子供ではなかった。浮気だった。

張さんが、妻の携帯電話の通話記録を取り寄せると、頻繁に電話をしていた人物が浮かび上がった。それは地元の順河鎮で共産党のトップを務める50歳 の鄭尚金書記だった。鎮というのは、日本で言えば村や町に当たる行政区画の一つだ。張さんが追及すると、妻はその二人目の子供を連れて家を出て行ってし まった。

「自分の子が突然、他人の子になってしまったことは、今でも受け入れることができない。子供に死なれたような気持ちだった。妻を奪われた挙げ句、子供まで奪われてしまった」

鄭書記は、仕事上の関係から元々妻の父親と交流があった。張夫妻の結婚式にも参列していたという。その鄭書記は、張さんが出稼ぎで他の都市に行っている間に妻に言い寄ったようだ。鄭書記は、妻に鎮政府の仕事に就かせていたという。

「相手は書記で鎮のトップなので、身元を引き受けるというやり方で、妻を政府のあらゆる部門の仕事につけることができたのです」

「31歳の家庭の主婦を手に入れることができたのは、地位と権力を使って、面倒を見てあげることができたからだ。書記は車で出迎えもして誘惑していた」
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