撮影は午前9時頃。太陽がかすんでいる。 6月19日北京の永安里にて 撮影 宮崎紀秀

撮影は午前9時頃。太陽がかすんでいる。 6月19日北京の永安里にて 撮影 宮崎紀秀

 

汚染の主役は大型粒子のPM10に

どんより空を覆うスモッグが悪役なら、力強く吹く風は正義の味方だ。

このところ、にわか雨が降ったり強い風が吹いたりしたため、北京にしては空気が浄化された感じがあった。それだけに、外に出てあまりの視界の悪さに我が目を疑った。

しかも、中国の環境保護省が、「北京を含む河北省など周辺地域の5月の大気汚染が、前年の同時期よりも改善した」と発表したばかり。分析によれば、強い風が吹けば、微小粒子状物質PM2.5が飛ばされて空気中の濃度が減るらしく、5月にはその効果があったらしい。

しかし、それだけではすまない。PM2.5が減った分、風の影響をあまり受けないPM10という大きな粒子が、大気汚染の主役になったというのだ。これでは、正義のヒーローが必死に怪獣をやっつけたと思ったら、更に大きな母怪獣が逆襲に現れたようなものだ。

建設現場などからの砂埃も大気汚染の原因。 6月19日北京の永安里にて 撮影 宮崎紀秀

建設現場などからの砂埃も大気汚染の原因。 6月19日北京の永安里にて 撮影 宮崎紀秀

 

◇「人間が空気清浄している」

汚染度を示す携帯電話のアプリによればこの日の空気は「重度汚染」。英語版では「unhealthy」。「屋外での活動を避けましょう」と助言して くれるのはいいのだが、それに素直に従って一日中部屋にこもっている訳にもいかず、マスクの"暑さ"に耐えるのか、それとも「重度汚染」の「不健康」な空 気をフィルター無しで吸い込む"恐怖"に耐えるのかを決断しなくてはならない。ちなみに中国では「人間が空気清浄をしている」という悪い冗談さえある。

中国の関係部門は、大気汚染の対策や統計を矢継ぎ早に発表し、その度に担当者は「これで大丈夫」と自信に満ちた笑顔を繕うけれども、実際の状況は一向に改善していない。こちらは、コメディのようだ。

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