襄陽市にある農貿市場。 写真 2013年11月湖北省宜昌市

襄陽市にある農貿市場。 写真 2013年11月湖北省宜昌市

 

食の安全が深刻な事態となっている中国。昨年、各地で豚の死骸の不法投棄が発覚したが、問題は投棄ばかりではなかった。調べていくと病死豚を闇で不法販売する事件も発生していたのだ。渾身の現地取材の第二弾。(アイアジア/宮崎紀秀)
●死んだ豚の肉が麺の具に

取材を進めていくと死んだ豚を巡り中国では更に深刻な事態が生じていることが分かった。その実態を調べるため宜昌から列車に乗り、湖北省で武漢に次 ぐ第二の都市である襄陽へ向かった。目的はそこにある農貿市場。農貿市場とは、個人や小規模農家が作物を売りに来るいわゆる自由市場だ。

襄陽には夜遅く到着したため市内で一泊し、翌日、市場に向かった。料理大国だけあって朝の市場はさすがに活気がある。日本では見たこともない野菜が土のつ いたまま山積みにされていたり、手づかみにされた腹いせに暴れて水槽の水を精一杯まき散らせた魚が、一瞬にして巨大な出刃包丁に切り刻まれたりしている。

市場の一画に肉売り場があった。並んでいる屋台はどれも脂で黒く染まっていた。その上には生きていた頃の形を連想させる大きな豚の枝肉がいくつもぶら下 がっていた。盛んに声をかけてくる売り子に、売っているのは病死した豚ではないかと尋ねると、「ウチは検査を受けているから大丈夫」と、太鼓判を押した。 確かに肉の表面には検査済を示すという紫色のインクのスタンプが直接押されていた。もちろん何でも偽造してしまう中国で、このスタンプさえ正規のものかど うかの保証はないが。

この約半年前、死んだ豚の肉を売買していたブローカーグループがこの市場の近くで摘発された。報道によれば、警察は合わせて7人を逮捕、6トン以上の肉を 押収した。肉はウイルスの感染で死んだ豚のものだった。グループは、養豚農家から死んだ豚を仕入れて解体し、その肉を通常よりも安く売りさばいていた。グ ループ内で販売を担当していた女は、逮捕後「500グラムを1元で仕入れ、2元で売っていた」と証言している。市価の7分の1程度だったという。
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