パレスチナやイラク、シリアなどの紛争地の取材を続ける古居みずえ、玉本英子(ともにアジアプレス)と、稲垣えみ子元朝日新聞論説員を交えての座談会が昨 年9月、東京で行なわれた。「遠い国の出来事」と思われがちな中東。そこに暮らす人びとの苦悩を、日本にどう伝えていくのか。(まとめ:古居みずえドキュ メンタリー映画支援の会)

2008、09年のイスラエル軍によるパレスチナ・ガザ地区への攻撃。古居みずえは攻撃直後に現地に入り、ドキュメンタリー映画「ぼくたちは見た ガザ・サムニ家の子どもたち」を制作した。(ガザにて撮影:古居みずえ)

2008、09年のイスラエル軍によるパレスチナ・ガザ地区への攻撃。古居みずえは攻撃直後に現地に入り、ドキュメンタリー映画「ぼくたちは見た ガザ・サムニ家の子どもたち」を制作した。(ガザにて撮影:古居みずえ)

 

◆身近なことと感じてもらうには
玉本:
長く通い続けているので、現地に友だちが多いんです。毎日イラク、シリアの友人たちと連絡をとっています。一般の人たちからすれば、今のイラクはイスラム 国(IS)が首を切るし、イスラムの女性は抑圧されてかわいそう、というイメージだけかもしれません。もちろん人びとは大変な思いで苦しみの中に生きてい ますが、それだけではないことも知ってもらえたら、もっと自分にひきつけることができるのではないかな、と考えます。

古居:
ほんとに他人のことというか、遠いところのことをどういう風に自分のこととして感じるかが大事だと思いますね。エーゲ海に浸かっていたシリア難民の男の子 の無残な姿を見たときに、ヨーロッパの人たちも心を動かされましたが、なんでそこまで行かないとわからないのかというのをすごく感じるんですね。

私たちは、いやなものは見たくない、つらいものは見ないようにする。やはり自分の生活の方が優先になる。自分も含めてです。日本にいた方が楽だし、 おいしいものは食べられるし、楽に寝られる。だけど、やっぱり気になるんですね。一番先に気になる。同じ地球の中に、そういう人たちがいるのは、どうして も気になる。そういう感じをもっていただけるように少しでも努力し、目指してきたんですけど、イスラム原理主義とかテロリストとか言われて、遠い世界の話 だと言われてきたんですね。だから、それを崩すために、あの人たちは普通の人で、私たちと同じように普通の生活を送りたいだけなんだということを少しでも 伝えたいと思います。

ガザの状況は、じわじわとくるイスラエルによる締め付けがあって、スローデスと言われます。自分たちは真綿のようなもので絞められて死ぬんだってい う感じで、すごく絶望的な状況なんですね。停戦になったから平和になったかと、みなさんそう思っているんですけれど、実際は瓦礫を毎日見ながら、将来の夢 も持てずに暮らしている状況は、何も変わっていません。昨年ガザで、たくさん密輸船に乗った人がいたんですね。私の運転手をしていた人もある日突然いなく なって、エジプトから乗るところだったんです。でもその前に五百人が沈没して死んだので、その人はたぶんあきらめたと思うんですけれど、そういうことが身 近に起こっていた。それがいまシリアで起こっている。そういった状況を、そこまで行く前になんとか伝えていくことが必要なんだと思います。
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