革命70周年記念で行進をするKNLAの兵士たち。正規兵として約5,000名を擁するとされる。その他、KNLAから分派したカレンの武装抵抗勢力を合計すると、カレン軍はおよそ10,000名と推定される。(2019年1月末カレン州にて撮影・宇田有三)。

◆社会の変化にともない停戦・和平路線へ

ミャンマー(ビルマ)とタイの両国に暮らすカレンの人びとがその日、カレンの人びとが命名するカレンの地「コートレイ(Kawthoolei)」に、再び集まってくるのだ。これまでKNUの「革命50周年」「革命60周年」を見てきた取材者として、やはり今回の70周年記念式典を目撃するという機会を逃すわけにはいかない。 停戦交渉に消極的なカレン軍(KNLA)はどのような立場でこの式典にのぞむのか。2年ぶりに、その革命記念式典会場に向かった。

革命70周年式典で挨拶するムトゥーセポーKNU議長(2019年1月末カレン州にて撮影・宇田有三)。

KNLA兵士たちの行進をスマホで撮影するカレンの人びと。(2019年1月末カレン州にて撮影・宇田有三)。

21歳のカレン人女性に式典を案内してもらった。今回の革命70周年について聞いていみたが「よく分からない」と言う。村に暮らす若いカレン人からは、長い武装抵抗の歴史を上手く説明できないもどかしさが感じられる。

記念式典の展示スペースには、カレン民族同盟(KNU)・カレン民族解放軍(KNLA)の歴代の議長や司令官の写真も飾られていた。(2019年1月末カレン州にて撮影・宇田有三)。

そこで、70歳を超える旧知のカレン軍兵士にも話を聞くことにした。KNLAの軍服に身を包み、誇らしげに革命70周年に参加していた。彼とは26年の付き合いがある。彼は以前、私に「ビルマ人は全く信用ならない。これまでのカレン人に対する抑圧の歴史が証明しているじゃないか。抵抗しなければカレン人は絶滅させられてしまうんだ」と話していた。

革命70周年記念の会場で旧知の老カレン軍兵士と再会する筆者(2019年1月カレン州にて撮影)

そんな彼が今回、苦笑いしながら私に語ってくれた。
「KNUは停戦交渉を始めた。しかし、こうやって革命式典を開いて武器は捨てないという意思を内外に示し、それと同時に平和な道を目指す方向だ。カレン軍は健在なりということをアピールしたいのだ」

彼は今でも抵抗の精神は失ってはいない様子だったが、KNUの置かれた現状やミャンマー社会の変化に、否が応でも停戦・和平へと考え方を変えたようだった。

革命70周年記念の会場横には、カレン民族の歴史や文化を伝える展示スペースも併設されていた。(2019年1月カレン州にて撮影)

◆KNU軍事部門の事実上の指揮者、ボジョー副司令官は記念日に姿を見せず

「カレン民族解放軍(KNLA:KNUの軍事部門)」の事実上の指揮者、ボジョー副司令官(2019年2月撮影)。

その革命70周年という記念すべき場に「カレン民族解放軍(KNLA:KNUの軍事部門)」の事実上の指揮者、ボジョー副司令官は姿を見せなかった。彼はその時、式典の会場とは遠く離れた、カレン州の山の中にいた。KNUという組織はこれまで、ビルマ族中心の政府に抵抗運動をしてきたことで、その軍事部門(KNLA)がKNU自体の政策を決定してきたという経緯がある。そのため、ボジョー副司令官が姿を現さないということは、政府との和平交渉において、KNUの方針の揺れがまだ続いているということである。

◆ボジョー副司令官に聞く

政府との和平交渉について「反対しているわけではないが、国軍に限らずビルマ(ミャンマー)政府側は、我々少数民族のことを尊重していない」と語る、ボジョー副司令官(2019年2月撮影)。

KNUと政府側との和平交渉は進んでいるのか? そのヒントを得るため、「革命70周年の記念式典」の取材後、KNLA副司令官ボジョーの連絡基地で密かに会い、その本音を聞いてみた。

――カレンの革命70周年という記念日にどうして参加しなかったのか?

ボジョー副司令官:今のKNU指導部による停戦・和平の進め方にやっぱり納得できない。もし今回の式典に私が参加すれば、否が応でも政府関係者と顔合わせしなければならないし。そうすると、今のKNUの方針に完全に賛成していると回りに誤解されるかもしれない。そうすると、ビルマ(ミャンマー)政府が決めた今の停戦和平交渉の話にのらなければならない恐れもある。問題なのは、今の和平交渉の基本方針とその内容が、あくまでもビルマ政府主導ということなんだ。そのやり方に、我々カレン側の意見は最初から入っていなかったんだ

――停戦や和平に反対しているのか?
 
ボジョー副司令官:決して、和平に反対しているわけではない。その和平交渉の進展が性急すぎる。例えば、停戦・和平交渉の取り決めで、交渉の最中にお互いの兵士は動かさないという取り決めだったが、国軍は我々の地域に入ってきている。実際、カレンの村人の避難民もいまだに出ている。しかも政府側は、経済的な投資を優先し、その勢いでカレンの人びとの気持ちを我々(KNU)から引き離そうとしている。国軍は、我々との信頼関係を損なうようなことをずっと続けている。それに、国軍に限らずビルマ(ミャンマー)政府側は、一貫してビルマ族至上主義を押し通し、我々少数民族のことを尊重していない」
(註:スーチー氏のNLDが政権に就いた後も、ミャンマー政府はカヤー州やモン州などの少数民族地域に、ビルマ独立の英雄アウンサン将軍の像を建てるなど、少数民族のプライドを逆なでする政策を続けている。それを多数派ビルマ族による「国作り」を強引に進めていると指摘されている)

――ボジョー副司令官のあなたを、武闘派とか過激派とかいう人もいるが、それについてはどう思うか?

ボジョー副司令官:「自分は誰にどう思われようといい。でも、我々を過激派という人たちは、一度でも私たちの話を聞くために我々に会いに来たことがあるか? なぜ私たちが今の和平交渉のやり方にブレーキをかけようとしているのか、その理由を考えようとしているか? 我々が長年、武器を持って抵抗しなければならかなかった経緯を理解しようとしたか? 多くの人は、いつも遠くから噂するだけ。」 

ボジョー副司令官が「(誰も)我々の意見を聞きに来ようとしない」という部分に力を込めたのが特に印象に残った。

筆者とボジョー氏。2000年、カレン州の山奥で、ボジョーがまだ第5旅団の旅団長をしていた頃に出会った。

分裂気味と噂されていたKNUはこの3月、カレン軍の元司令官のムトゥーセポー氏が交渉のトップから引退し、新しいメンバーで政府との和平交渉を再開した。その新しいKNUのメンバーとKNLAの関係はどうなるのか、さらにどのようにミャンマー政府と話し合をしていくのか、明確な道筋は見えていない。大多数のカレン人は今の交渉内容に疑問を抱きつつ、一刻も早く平穏な生活を望んでいる。(了)