ヒンドゥー教で禁じられている牛を食べるマガル族

(写真右:水牛や牛の肉がぶら下がる簡易食堂)
ジャナバディ・メラの会場に設置されたテントの軒先には、牛や水牛の肉の塊がぶら下がっていた。ヒンドゥー教は聖なる動物とする牛を食することを禁じている。

憲法で、ヒンドゥー教を国教と定めたネパールでは、牛を殺すと実刑に処せられるほどである。しかし、ここでは、村人は皆堂々と牛肉を食べていた。敬虔なヒンドゥー教徒が目にしたら、とんでもない光景と映るだろう。ある村人はこう話した。

「以前は、死んだ(殺したのではない)牛の肉だけ食べていたが、マオイストが来てから、殺した牛も食べるようになった」
ヒンドゥー教が入る以前、ロルパのマガル族は牛を食べていた。ヒンドゥー教徒の国王がネパールを統治するようになり、牛を食べるのがタブー視されるようになってからは、崖から落ちるなどして死んだ牛だけを食べていたという。

ロルパのマガル族が卑下され、官憲から抑圧されてきた理由の一つがこうした彼らの習慣にある。民主化以前のパンチャヤト時代には、牛を殺したという罪を着せられて投獄されたマガル族もいると聞く。しかし、マオイストが村を支配するようになり、彼らの古い習慣が再び戻った。

(写真右:村人に混じって踊りを見る、ガルティガウン村から来たジャナ・ミリシアのメンバー。ジャナ・ミリシアの武器は、ほとんどが自家製ライフルである。)
ジャナバディ・メラには大勢のマオイストが来ていた。私服のマオイストと普通の村人を見分けるのは難しいのだが、DCM(郡委員会メンバー)クラスのマオイストだけでも7人に会った。

もちろん、彼らは基本的に、党外の人間には自分の党内での地位は明かさない。村人に聞いて、後からわかったというケースがほとんどである。“ジャナ・ミリシア(人民義勇軍)”も大勢いた。彼らはグリーンの制服を着て、ライフルを持っているので、すぐに見分けがつく。

ジャナ・ミリシアは、人民解放軍の予備軍といってもいい。基本的に自分の村に滞在して村人を守るとともに、道を作ったり、畑仕事をしたりといった生産活動に従事する。ジャナ・ミリシアには“WT(Whole Timer)”と“PT(Part Timer)”がいるのだという。前者を“正社員”としたら、後者は “パート”と言っていい。人民解放軍に入れるのはWTの方からだけだという。
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