山中の道程にて(上)

※お断り ミャンマー(ビルマ)入国取材の安全を期して、宇田有三氏は「大場玲次」のペーネ  ームを使用していましたが、民主化の進展に伴い危険がなくなりましたので、APN内の記事の署  名を「宇田有三」に統一します。

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往復2週間かけて、近くの村へ緑豆を買いに出かけたラワン人の男の子。担ぐお豆は15kgを超える重さである

 

「ティベタン」
そう呼ぶが、いったいそれは何を意味しているのだ。
最初、その単語を聞いたとき、民族の呼び名だとは気づかなかった。というのも、山に入って2日目、すぐに後悔の念に襲われたからだ。

まったく予期していなかった乾季の冷たい雨に見舞われ続けた。険しい山道で、泥濘に足を取られて幾度となく転んでいた。ポーターたちも休憩所までついつい早足で前を急ぐ。それについて行くのがやっとで、身体の疲れが極限を超える。「ティベタン」が何かを考える。そんな余裕などなかった。

ガイドのウー・テェットンの口からは何度も「ティベタン」という意味不明の単語が繰り返されていた。
最初は、「ティベタン」とは、山奥に住むある特定の民族名だと思っていた。すぐにそれがチベットの人を指していのだとは結びつかなかった。彼の発音も不明瞭だったし、ビルマには驚くほど細分化された民族があるので、その1つだと思い込んでいたからだ。
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