空港でイラク大統領と閣僚ら要人の警護活動をする民間軍事会社(PMC)警備員(2006年 撮影:玉本英子)

 

玉本英子 現場日誌
イラクやアフガニスタンなど21世紀に入ってはじまった戦争や紛争では、あらたな軍事の形が生み出されている。そのひとつが、正規軍や外国駐留軍の補完的な任務をおこなう「民間軍事会社(PMC)」の存在である。
民間企業という立場でありながら、正規軍と連携し、ときに独立して活動する。 小火器からヘリコプター、航空機、防弾車まで所有し、小規模な軍隊並みの装備で、攻撃を受けた際は独自の判断で反撃することができる。

イラクでは占領統治がはじまった直後から、ブラックウォーター社(現Xe社)をはじめとする複数のPMCが警備・軍事業務を開始した。
PMCの武装警備活動は兵士に準じる業務で、危険度に応じて警備員に支払われる額はアメリカ国籍などの外国人の場合、日給にして3~10万円ほどだ。このため実戦経験豊富な傭兵あがりや元軍人らの、いわば「戦争請負人」が世界各地からやってきた。

米軍戦闘部隊撤収後のイラクについて、バグダッドでPMCとして働くアイルランド人警備員に匿名を条件に電話で話をきいた。
ジョージ(匿名30代)は、元フランス外国人部隊兵士。いくつかの警備専門会社を渡り歩いた後、2010年にバグダッドにやってきた。

「要人警護や物資輸送防護など、正規軍の手がまわらない任務をするのが自分たちの仕事。戦闘の被害を最小限にするための効率を追求した形がPMCだ」
オバマ政権が公約する2011年末のアメリカ軍の完全撤退についてはどう思っているのだろうか。

「完全撤退はしないと思う。規模を縮小しても2、3万程度の駐留軍は残るだろう。個人的な見解だが、これは この地域をめぐるアメリカの明確な戦略。韓国、ドイツ、コソボ、日本に対するものと同じようにね。アメリカ軍撤退後も我々はイラクで仕事を続けるだろうし、アフガンでの需要もさらに高まることだろう」
正規軍の兵士であれば、何らかの問題が起きたとき、軍法会議などの制度が存在しているが、PMCの人員の場合は、戦時法における地位もあいまいなままだ。

正規軍は撤退しても、「戦争の外注化」によって実際には民間軍事会社が現地で準軍事活動を続ける。その責任も地位もあいまいな形なままであれば、民間人の犠牲が生み出され続けることになる。
現在、イラクではこうしたPMC人員もイラク人が担うようになっており、プロの外国人警備員は、これらを統括する役回りという。そして、「戦争のプロ」たちは、次の仕事を求めて、別の国の戦争や紛争地へと向かう。