"辺境"の風景(下)

※お断り ミャンマー(ビルマ)入国取材の安全を期して、宇田有三氏は「大場玲次」のペーネームを使用していましたが、民主化の進展に伴い危険がなくなりましたので、APN内の記事の署名を「宇田有三」に統一します。

 

カチン州の山奥で旅装を解いたある村の朝。囲炉裏の回りで暖をとる村びと。

カチン州の山奥で旅装を解いたある村の朝。囲炉裏の回りで暖をとる村びと。

 

プータオを出発する前、当初の計画では荷物を持ってもらうポーターを6人手配していた。だが、荷物の多さから、結局、1人増やして7人になった。
私自身も、もちろん身の回りの荷物を持たなければならない。プータオに残す荷物と、持っていく荷物の仕分けをやり直すことになった。その時、ウー・テェットンに尋ねた。

「山の中だから、電気はないね。かさばる充電器なんか持って行ってもしかたないよね」
「もちろん、電気はない。ずっとロウソクとたき火の生活だよ」

ビルマ最北地域に位置するとある村。家の中の調度品を見せてもらった。そこにはやはり、カセットテープのデッキが据えられていた(中国側から購入)。ここの村にも電気がある様子がうかがえた。

ビルマ最北地域に位置するとある村。家の中の調度品を見せてもらった。そこにはやはり、カセットテープのデッキが据えられていた(中国側から購入)。ここの村にも電気がある様子がうかがえた。

 

ところが、パナンディンで夜を明かした翌日、宿舎の外に出てみると、なんと電球がついている。えっ、とこれも一瞬、びっくり。
ウー・テェットンにどういうことかその訳を尋ねてみた。どうやら中国側から持ち運びが可能な小型の発電機(300Wほどの発電量)を買ってきて、川に据えているそうだ。

川の水の落差がある箇所を利用して発電しているらしい。電球ほどならまかなえる発電量だという。この山奥では、贅沢しなければ、ある程度の電気器を使えるのだ。ビルマの最大都市ヤンゴンでもしょっちゅう停電で不自由していたので、この山奥での電気には驚きである。
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