石丸:直洞は大きな国営炭鉱ですが、全体から見れば既存の国営の炭鉱と「チャト」ではどちらが大きいですか?
キム:規模は国営炭鉱の方が大きいです。「チャト」は、国営炭鉱で石炭を掘った後、放棄した坑を復旧させたものなんです。復旧作業をしながら新たに炭層を探して採掘します。それを「マグリ」といいます。この度あらためて順川地区に行って「チャト」を取材してみて驚いたんですが、直洞炭鉱には、すでにおよそ二〇〇もの「チャト」が入っているんです。

石丸:「チャト」には、採炭工がどれくらいいますか?
キム:平均で三小隊ぐらい持っています。一小隊平均七〜八名で、うち一人は補助の女性なので、六〜七人が八時間交代で採掘しています。一小隊が五〜六トンを採掘すれば成果ですよ。一トンあたり一〇〜一三ドルで売っています(石丸注:一一年になり石炭価格が上昇、一トン当たり二一ドルで売っているという)。

三交代で一日一五トンも採れば、一五〇〜二〇〇ドルにもなる。多い時は一日一〇〇〇ドル稼ぐ。だから現地では、「チャト」をもっとやろうと言っていました。

石丸:だけどその中から給料など経費も必要ですね
キム:もちろん。一小隊七人として、労働者本人の給料と配給、それから家族分の配給を合わせてもせいぜい一日二〇ドルぐらいしかかかりません。採炭工の配給は一日九〇〇グラム、家族は一人三〇〇グラムで計算するとのことでした。給料は基地ごとで違いますが、一ヶ月平均一万ウォンにはなるでしょう。配給はトウモロコシですが、儲かっている「チャト」は全部白米でくれる所もあります。祝日には食用油や肉もくれるそうです。配給食糧は「基地長」が市場で調達します。小規模の「チャト」の労働者の方が国営炭鉱よりずっと待遇がいいです。

石丸:電気も使うでしょうに。
キム:朝鮮は電気代はいくらにもならないし、「チャト」ではたいして電気を使わないんです。「炭車」は(坑内から)人力で押し出して来ます。ただ、そのレールや坑木などの資材や設備は「基地長」が自分で買ってこないといけない。国営炭鉱では調達してくれません。
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