◆犯人逮捕で公然化 当局は厳罰で臨む

特集[2012黄海道飢饉]記事一覧
(3) 黄海道の民衆の証言 下(リ・ジンス 石丸次郎)

(承前)

今回の取材でとりわけ衝撃を受けたのが、人肉事件に関する証言が何度も飛び出したことだった。取材した黄海道住民全員が、人肉を食したり流通させた事件が周りで起こったと語ったのだ。

「私の村では、5月に子ども2人を殺して食べようとした父親が銃殺になりました。妻が商売で留守の間に長女に手を出したのですが、息子に目撃されたため、一緒に殺したのです。

(参考写真)めぐんでもらった食べ物を口に運ぶ男の子。痩せている。黄海北道 沙里院(サリウォン) 2008年9月 シム・ウィチョン撮影

(参考写真)めぐんでもらった食べ物を口に運ぶ男の子。痩せている。黄海北道 沙里院(サリウォン) 2008年9月 シム・ウィチョン撮影

 

家に戻ってきた妻に『肉がある』と勧めたのですが、子どもの姿が見えないことをいぶかしんだ母親が、翌日保安部(警察)に通報すると、軒下から子どもたちの遺体の一部が見つかったそうです」(リム氏)

「死んだ孫の墓を掘り起こして、その死体を食べた祖父が捕まった事件があった」(ク記者)

一方、北朝鮮当局も人肉を食したり売ったりする行為に対しては、厳罰を持って臨んでいるようだ。

「海州(ヘジュ、黄海南道最大の都市)では5月に、11人を殺しその肉を豚肉として流通させた犯人が銃殺された」(リム氏)

(参考写真)女性が身の丈の倍はありそうな丸太を何本も担いでいる。薪として売るために山から切り出してきたと思われる。2008年8月 黄海南道 海州(ヘジュ)市郊外 シム・ウィチョン撮影

(参考写真)女性が身の丈の倍はありそうな丸太を何本も担いでいる。薪として売るために山から切り出してきたと思われる。2008年8月 黄海南道 海州(ヘジュ)市郊外 シム・ウィチョン撮影

 

これ以外にも、文字で表現することを憚られるような証言をいくつも耳にした。このようなおぞましい人肉事件の噂が広まったのは、警察沙汰になって事件が公然化したためである。また、人肉事件は去年までまったく聞かなかったと、証言者たちは口を揃えた。(続く)

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