Q. 各民族の、ビルマ族(ミャンマー族)中心の国家形成に対抗しようとする民族意識は今も続いているのですか。
A.
 この数年、急激な変化を起こしています。私はこれまで23年かけてビルマ全土を歩きまわり、それぞれの訪問地で出会う人びとに、機会があれば「バー・ルゥーミョー・レー?(あなたは何人〈何民族ですか〉?)」と聞きました。
※「ルゥーミョー」とはビルマ(ミャンマー語)語で「人種・民族」という意味

Q. どんな答えが返ってきましたか?
A.
 2002年頃までは、ミャンマー人なら「バマー(ビルマ人です)」と答えてくれました。(注:歴史的に「ビルマ(バマー)」は口語表現として、「ミャンマー」は文語表現として使われてきた)

また、カチン(ジンポー)の人であれば「カチン人です」、カレン人なら「カレン人です」、チン人なら「チン人です」などと返ってきました。

ところがこの数年、軍政時代の「ミャンマー」呼称教育が徹底してきたのか、「あなたは何人(何民族ですか?)」という質問に対して「ミャンマー(ミャンマー人です)」と返答する人びとが増えてきました。

ミャンマー族の人が「ミャンマー」と答えるのはまだ理解できましたが、ビルマ(ミャンマー)族以外の人が「ミャンマー」と即答する人がほとんどだったのには驚きました。

そこで、「ミャンマー(人)」と答えた人に対して、「バマー(ビルマ族)ですか?」と重ねて質問をするようにしました。すると、ビルマ族の人なら「バマー」との返答があり、それ以外の民族の人なら、例えば「カレン人です」とか「モン人です」という返事がありました。

軍政下で「ミャンマー」という語句の使用を強制してきた結果として「ミャンマー」と答える人が増えてきたようです。さらに、2011年の民政移管前後から、ミャンマー国民としての意識から「ミャンマー」と返答する人が日常的になってきました。

民政移管後のビルマでは、ビルマ族の人に限らず、ラカイン族やカレン族などの少数派民族の人びとも最近、自分たちのアイデンティティを「民族」よりも「国民」の方により強く意識を持つようになっている。そんなことに改めて気づきました。(つづく)
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