抗議デモの発端となったテヘラン大バザール。イランの新年ノールーズを前に、店は営業を再開し、いまは賑わいを取り戻している(2026年2月5日筆者友人撮影)

昨年末から年始にかけて、イラン全土で広がった反体制デモ。激しいインフレとドル高を背景にバザール商人らが声を上げ、市民や学生を巻き込む大規模な抗議活動となった。ネットは遮断され、治安部隊の弾圧で多数の死傷者が出た。揺れるイランの現状は。(大村一朗

イランではすでに日常を取り戻していると、テヘランに住む友人からメッセージが届いた。人々は働き、子供たちは学校に通い、店も開いていて、カフェもにぎわっている。しかし、わずか数週間前、主要な広場や通りが大群衆で埋め尽くされ、銃声が鳴り、人々が殺されたむごたらしい光景が記憶から消え去るはずはない。

◆日常を取り戻しても、忘れることはできない

「トランプやパーレビ皇太子が、デモに参加するよう国民に呼びかけたから、みんな1月8日と9日、勇気を出して外に出たのに。これ以上治安部隊が国民を殺すなら、必ず助けに行くと、彼らは言っていたのに。今、何してくれるの?」

声をあげた人が無惨に殺され、今も拘束されている人が大勢いる。早く彼らを助けてほしい、どうにかしてほしい。行き場のない怒りと焦りがふとした瞬間、胸にこみあげてくるという。

イラン国内紙エッテマード(2026年1月8日付)は『閉店した市場と長引く不況』のタイトルで軒並み店を閉めるバザールの写真と、店主らの先の見えない絶望を伝えた。

◆生活の先行き見えず

2025年12月28日、イラン通貨リヤルの下落と激しいインフレに怒ったバザール商人がデモを起こした。これに端を発したイランの抗議デモは、瞬く間に全土に広がった。

改革派新聞エッテマードはテヘラン市街のバザール取材で、「今日の売値で明日仕入れが出来るのか分からないのでは、靴下一足さえ売る気になれない」と店主の言葉を伝えた。多くの店舗は賃貸であり、家賃が払えず店を畳む店主があとをたたない。

ドル高により様々な業種で輸入品の仕入れが困難になると、それは多くの日用品の分野にも波及し、市民の生活を圧迫した。

SNSに投稿された抗議デモの様子。デモが最も激しかったと言われる1月8日、テヘランの街頭で治安部隊を敗走させ気勢を上げるデモ隊。

エッテマード紙は同じルポの中で、「100万トマン(※自由レートで1000円程。公定レートで3500円程。国民1人に4か月間支給すると発表された政府補助金)で抗議活動が鎮まるとでもいうのか。100万トマンでは米5キロも買えない。たまご1ケースが45万トマン(約450円)に達し、貧困層の食卓から消えてしまった。人々が抗議活動をしないわけがない」と市民の言葉を伝えた。

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