
テヘランをはじめとする各都市では、市街の複数の場所でデモ隊と治安部隊の激しい衝突が起こり、そこから離れた暗闇の家々からは、「独裁者に死を!」と叫ぶ女性や子供の声が夜空にこだましていた。この夜、イラン国内のインターネットと外国との通話が遮断され、情報が国外に漏れ伝わることがなくなった。SNSが使えない中、パーレビ氏は衛星放送を通じて再三デモの呼びかけを続けた。
ネットが遮断されてから、大規模な弾圧が行われたようだ。SNSで世界に発信された映像には、路上や病院内などに、遺体を収容した黒い袋が無数に散乱し、親族を探し求める人々の姿が映し出されているものもある。街頭での抗議活動がいつごろ収束したのか正確な時期はわからない。
筆者がイランの地方都市に住む友人とネット電話が通じ、国内のニュースメディアのページを閲覧できるようになったのは1月23日午後9時過ぎ(日本時間)のことだった。彼は、「もう静かになったよ」と言い、理由を問うと「殺されるからさ」とだけ答え、それ以上この話題を続けようとはしなかった。盗聴を恐れたのかもしれない。

◆死者数の真相究明は不可能とも
死者数は、国外の人権団体が数百から数万まで様々な数字を上げていたが、21日にイラン政府が3117名と公式に発表した。そのうち2427名は罪のない市民や治安関係者であるとし、その死を「殉教」と呼んだ。つまり、デモに参加して治安部隊に殺されたのはわずか690名の計算になる。
このロジックには裏がある。テヘランの友人によれば、遺体の引き取りに遺族は日本円で30万円以上の金額を請求され(低中間層の年収に相当)、払えなければ一筆書くことを強要される。つまり『この遺体はデモ隊によって殺された治安要員である』と。ペゼシュキヤン大統領は「遺体に対する不適切な扱い」が行われていると非難したが、引き渡しの見返りに一筆を書かせるという問題について言及したものかは不明である。
イラン政府が公式に発表した死者数そのものについても、国内外から疑問の声が上がっている。イラン国内のメディアは、すべての死者の氏名と国民番号を明らかにしなければ本当の死者数は分からないと報じ、ペゼシュキヤン大統領も同様の調査を命じた。
その調査結果が2月2日に発表された。死者のうち2986名の身元と国民番号の照合が終わり、閲覧も可能とのこと。残る131名については身元が分からなかったり、国民番号との照合ができなかったりした人たちだという。
しかし現実には、身元もわからないまま埋葬された人も多くいることや、そもそも当局に身元を特定されないよう、死者や負傷者の身元を本人や家族にあえて求めなかった医療機関も多いとされ、正確な死者数の割り出しは不可能と言われている。























