すでに特定秘密保護法や重要経済安保情報保護活用法など各種の国家秘密法制、国家公務員法・自衛隊法の守秘義務規定が存在するにもかかわらず、なぜ高市政権は新たに「スパイ防止法」の制定を目指すのだろうか。その狙いは何か。(吉田敏浩/写真はすべて筆者撮影)

◆国民・市民監視につながる「外国代理人登録法」

まだ高市政権による「スパイ防止法」の法案が提出されていないので、具体的な条文がどうなるかはわからない。だが、自民党と維新の会の「連立政権合意書」の「インテリジェンス・スパイ防止関連法制」の項目に、「外国代理人登録法」とあるのが、まず目をひく。

政府は今夏、「スパイ防止法」の法案づくりに向けて有識者会議を設け、具体的な議論を始める見通しだが、高市政権内ではこの「外国代理人登録法」などの整備(制定)が想定されているという(『朝日新聞』2026年2月17日朝刊)。

維新の会の安全保障調査会「インテリジェンス・スパイ防止法タスクフォース」が、昨年10月に発表した「『インテリジェンス改革』及び『スパイ防止法』(仮称)の策定に関する中間論点整理」によると、「外国代理人登録法」制定の目的は、「防諜体制強化」であり、「外国政府並びに外国の組織及び企業等の利益のために、国内で政治的又は宣伝的な活動を行う者を透明化すること」だという。そして、次のように具体的な構想を述べる。なお「防諜体制」とはスパイ防止体制のことだ。

衆議院が解散された日の国会議事堂(2026年1月23日撮影)

「国内で活動する『外国の利益を代表して活動する者(外国代理人)』は、政府の所定機関に登録し、活動内容及び資金の出所等を報告する義務を負い、それらは公開される。当該義務等に違反した場合の刑罰を定める』

このような維新の会の「外国代理人登録法」構想は、法案策定の過程で自民党側ともほぼ共有されるとみられる。

現に自民党の小林鷹之政調会長は昨年10月30日の記者会見で、「スパイ防止法の制定を念頭に、外国勢力やその代理人が日本国内で情報収集活動をする場合に登録を義務付ける制度が必要との考え」を示し、「米英両国の外国代理人登録法に触れ、『外国勢力の情報収集活動を国民の監視下に置くルールがあってしかるべきだ』と述べた」(『共同通信』2025年10月30日)。

また自民党と足並みをそろえるように「スパイ防止法」制定に積極的な国民民主党と参政党も、それぞれ昨年の臨時国会に「インテリジェンスに係る態勢の整備の推進に関する法律案」や「防諜に関する施策の推進に関する法律案」を提出し、それらのなかに「外国代理人登録法」と同様の趣旨の「外国による不当な影響力の行使の防止のための措置等」や「外国から指示等を受けた者が行う活動の透明性を確保するための制度の創設」といった条文案を盛り込んでいる。

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