◆自爆ドローンでの死傷が増加

地雷、砲撃、銃創など負傷する部位や度合いも様々だ。この2年ほどは、自爆ドローンが戦術的に戦闘に投入されるようになり、ドローンの爆発による死傷が増えているという。

イワン看護師は、心肺蘇生装置を見せながら言った。

「私たちにとって、結果を出すことがすべてです。結果とは、命を救うことにほかなりません。この医療チームのそれぞれの行動が、その結果に直結します。ゆえに結果を出せなかったときは心底つらいです」

結果を出せなかったときとは、処置の甲斐なく、負傷兵が息絶えたときだ。

正式には「第5独立強襲キーウ旅団」。現在はドネツク州クラマトルスクからコスチャンティニウカ(コンスタンチノフカ)の前線地帯に展開。地図は2026年1月上旬時点の状況。(地図作成・アジアプレス)
複数の区画に分けられ、人工呼吸器や超音波診断装置、簡易ベッドが並ぶ安定化拠点。(2025年4月・ドネツク州前線・撮影・玉本英子)

◆「兵士の心の傷の対処は容易ではない」

パブロ医師(42)は、侵攻前、首都キーウの病院に勤めていた。動員令によって招集され、衛生中隊に配置された。一般病院で働いていた頃と、戦場ではまったく状況が異なると話す。

「大きな戦闘があったときなどは、一度に10人、20人の負傷者が担ぎ込まれてくることもあります。ときには手足を吹き飛ばされた兵士もいます。そんななかで即座に正しい選択をしなければなりません。ミスをしても、やり直しなどできない。病院勤務では他の医師と処置方法を検討し、助言をもらえましたが、そんな時間もない。すさまじい重圧です」

事故や災害と違い、戦場では長期的、継続的に重傷者が運ばれてくる。それが何年にもわたっているうえに、戦争はいつ終わるかはわからない。

侵攻前は、キーウの病院勤務だったパブロ医師。「同じ命を救う現場でも、一般病院と野戦病院はまったく違う。即座に正しい処置方法の選択を迫られる重圧がある」と話す。2025年4月・ドネツク州前線・撮影・玉本英子)
人工呼吸器のモニター。安定化拠点での迅速な処置が負傷兵の生死を分ける。(2025年4月・ドネツク州前線・撮影・玉本英子)

彼は、過酷な経験のひとつを語ってくれた。ある日、自爆ドローン攻撃で3人の若い兵士が頭部に重傷を負って運ばれてきた。いずれも眼球をひどく損傷し、視力回復は見込めなかった。

「死ななかったのは幸いですが、喜ぶ気分にはなれませんでした。家族の顔を、その目で見ることはもうできない。彼らのこれからの人生、そして家族の苦労を思うと、心が痛みました。戦闘で身体に負った傷は治療もできるでしょう。でも、兵士の心の傷への対処は容易ではないんです。除隊しても、何年もトラウマに襲われることもある。彼らはその傷を抱えて生きていかねばなりません」

パブロ医師には、妻と10才の息子がいる。要員交代の合間を調整して休暇が取れた時に、家族のもとに戻って、一緒に過ごす時間が最もかけがえのないひとときという。(2025年4月・ドネツク州前線・撮影・玉本英子)

衛生中隊にも犠牲者が出ている。戦闘現場で負傷者の処置中や搬送時に自爆ドローンで狙われるほか、安定化拠点そのものが爆撃されることもある。 壁には、砲撃で戦死した仲間の兵士の顔写真が掲げられていた。命を救う衛生兵もまた、危険ななかで任務に向き合っている。

衛生中隊の拠点はロシア軍との接敵ラインから少し後方に位置するとはいえ、衛生中隊にも死傷者が出ている。壁には砲撃で戦死した兵士を追悼する写真が掲げられていた。(2025年4月・ドネツク州前線・撮影・玉本英子)

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※ 取材時から少し時間が経過しての掲載ですが、部隊配置などの情報を考慮して時間差が出ています。また任務中の兵士はフルネームが出せない場合があり、兵士のコールサイン(ポズブノイ)名で表記することがあります。

 

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