◆自爆ドローンでの死傷が増加
地雷、砲撃、銃創など負傷する部位や度合いも様々だ。この2年ほどは、自爆ドローンが戦術的に戦闘に投入されるようになり、ドローンの爆発による死傷が増えているという。
イワン看護師は、心肺蘇生装置を見せながら言った。
「私たちにとって、結果を出すことがすべてです。結果とは、命を救うことにほかなりません。この医療チームのそれぞれの行動が、その結果に直結します。ゆえに結果を出せなかったときは心底つらいです」
結果を出せなかったときとは、処置の甲斐なく、負傷兵が息絶えたときだ。


◆「兵士の心の傷の対処は容易ではない」
パブロ医師(42)は、侵攻前、首都キーウの病院に勤めていた。動員令によって招集され、衛生中隊に配置された。一般病院で働いていた頃と、戦場ではまったく状況が異なると話す。
「大きな戦闘があったときなどは、一度に10人、20人の負傷者が担ぎ込まれてくることもあります。ときには手足を吹き飛ばされた兵士もいます。そんななかで即座に正しい選択をしなければなりません。ミスをしても、やり直しなどできない。病院勤務では他の医師と処置方法を検討し、助言をもらえましたが、そんな時間もない。すさまじい重圧です」
事故や災害と違い、戦場では長期的、継続的に重傷者が運ばれてくる。それが何年にもわたっているうえに、戦争はいつ終わるかはわからない。


彼は、過酷な経験のひとつを語ってくれた。ある日、自爆ドローン攻撃で3人の若い兵士が頭部に重傷を負って運ばれてきた。いずれも眼球をひどく損傷し、視力回復は見込めなかった。
「死ななかったのは幸いですが、喜ぶ気分にはなれませんでした。家族の顔を、その目で見ることはもうできない。彼らのこれからの人生、そして家族の苦労を思うと、心が痛みました。戦闘で身体に負った傷は治療もできるでしょう。でも、兵士の心の傷への対処は容易ではないんです。除隊しても、何年もトラウマに襲われることもある。彼らはその傷を抱えて生きていかねばなりません」

衛生中隊にも犠牲者が出ている。戦闘現場で負傷者の処置中や搬送時に自爆ドローンで狙われるほか、安定化拠点そのものが爆撃されることもある。 壁には、砲撃で戦死した仲間の兵士の顔写真が掲げられていた。命を救う衛生兵もまた、危険ななかで任務に向き合っている。

※ 取材時から少し時間が経過しての掲載ですが、部隊配置などの情報を考慮して時間差が出ています。また任務中の兵士はフルネームが出せない場合があり、兵士のコールサイン(ポズブノイ)名で表記することがあります。























