◆朴家はどうやって暮らしているのか?

さて、朴家の家計簿を付けてみると、食糧支出とその他の支出を合計すると44万4900ウォン、ざっと収入の2倍になってしまった。「一体全体どうやって食べて生活しているのか?」という疑問は一層深まるばかりだ。

さらに付け加えておかねばならないのは、庶民にとって主食であるトウモロコシ価格が5月から8月のわずか3カ月で2倍に高騰したことである。ただでさえ買い足りなかった食糧が、これまでの半分しか購入できなくなっているのだ。栄養失調になるのは避けられない状況だ。

2026年5月から8月までの個人間取引の食糧価格の推移。トウモロコシが8月に入り急騰。3カ月間で2倍になった(製作アジアプレス)

◆貧窮する民の対処法とは

どうやっても大赤字。庶民たちはどう対処しているのだろうか? まず当然考えるのは節約、そして食べる量を減らすというやむを得ない方法だ。経済状況が悪くなる度に北朝鮮住民は、白米をトウモロコシに、1日3食を2食に、2食を1食に、ご飯を粥に、という具合に、ぎりぎりの節食を断行してきた。

トウモロコシ粉を溶いた粥に量を少しでも増やすためにたっぷりの菜っ葉を入れ、味噌や塩だけで食べることは、民衆が昔から当たり前にやって来た耐飢法である。自宅に庭がある場合は、栽培した野菜を食事の足しにすることができるので、アパートより、隣家と棟続きであっても平屋暮らしの方が良いと考える庶民が多い。

次に、労賃と「賃加工」の収入だけでは絶対的に足りない現金を、何らかの方法で確保することが欠かせない。例えば、山で薬草や山菜、薪を取ってきて売るというのが、北朝鮮庶民のごく一般的な方法だ。だが、多くの稼ぎは望めない。余裕があれば子豚を買ってきて自宅で飼育して売る(アパートでも豚や鶏を飼うことは普通だ)、道具を所有していれば川辺で砂金採取することも可能だ。

留意しなければいけないのは、コロナ禍以降、金正恩政権が個人の経済活動や私的雇用を厳しく統制したため、都市住民が現金収入を得る機会がどんどん失われてしまったことだ。

2020年以前は、商売をはじめ、菓子やモチの製造・販売、リアカー引きの運び屋、工事現場の日雇い労働など、努力次第で個人が日銭を稼ぐ余地が様々あったが、ほぼ不可能になった(今でも、特別な技術のある者は、請われて建設現場や内装工事などで働いて良い日当を得るケースがある)。

個人の裁量で現金を稼ぐ余地が限りなく狭くなった今、ハイパーインフレに翻弄された住民の生活は、さらに厳しくなっている。「追い詰められて盗みや強盗、売春に手を出す人も珍しくない」と、北部地域に住む取材協力者たちは報告してきている。

次回は、連載の最終回だ。大規模物価調査を俯瞰して、北朝鮮経済の評価を試みたい。

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

北朝鮮地図 製作アジアプレス

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