両江道恵山市の民家近くの空き地にずらりと駐車された密輸車両。ナンバープレートがない。隅に見える青い小屋は車両警備のために仮設されたものと見られる。2025年9月、中国側から撮影(アジアプレス)

中国から北朝鮮へ税関を通じて車両が輸出されていることが分かった。2017年の国連安保理による対北経済制裁強化によって、車両及びその部品は輸出禁止対象であり、明らかな制裁違反である。北朝鮮は国家次元で昨年8月頃から鴨緑江上流で大々的な車両密輸を行ってきた。一方の中国当局は黙認してきた密輸を取り締まる方針に転換、今年夏頃から車両の公式輸出を始めた。現地の状況を両江道(リャンガンド)に住む複数の取材協力者に聞いた。また、あえて制裁違反に踏み切った中国の狙いは何なのか? (洪麻里/カン・ジウォン)

◆「公式」ルートで新車が続々 新鴨緑江大橋には待機車両ずらり

税関を通じた正規の貿易で中国から車両が入って来る現状を調べた北部の両江道の協力者A氏は次のように伝える。

「税関を通じて輸入されるのは新車だけで、中古車や(車両)部品は入ってこない。最近は(中国メーカーの)BYDの電気自動車が入ってきている。ここ(恵山)で使われるのではなく、前の方(中南部地域)から注文を受けて搬入している。週に1~2回程度、1回につき10~17台の電気自動車とガソリン車が入っている。乗用車中心で、重機は丹東方面から入っている」

両江道の別の協力者B氏は「公式の貿易で車両が入って来るようになったのは8月頃だ」と述べた。

協力者A氏が言及する中国丹東市でも、新たな動きが見られる。

鴨緑江下流に位置する平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)市と丹東市は、朝中間最大の交易量を誇る。日本の植民地時代に完工した鴨緑江大橋を通じて人と貨物が行き来してきたが老朽化が進み、下流に建設が始まった新鴨緑江大橋は2014年に完工。だが、北朝鮮側が開通を遅延させ長く放置されていた。中国の新華社通信は、新橋が今日15日に開通したと報じた。

今月上旬、開通を待つ新鴨緑江大橋付近では、車両輸出と関連すると見られる動きが見られた。朝日新聞は6日、新鴨緑江大橋のたもとに新車とみられる赤い貨物トラックがずらりと整列する写真を報じた。いずれもナンバープレートはないという。米国の「自由アジア放送」(RFA)も8日、衛星画像で貨物トラックが駐車している様子を確認し報じた。その数は100台以上にのぼるという。順次、北朝鮮側に運ばれるとみられる。

開通前の新鴨緑江大橋。2025年9月撮影(アジアプレス)

◆「国家密輸」が公然と行われてきたが…

前述したとおり、北朝鮮への車両輸出は国連安保理の経済制裁によって全面的に禁止されている。だが、独自に車両を生産できない北朝鮮にとっては、車両の更新や部品の調達は、経済、軍事面をはじめ、体制維持にとって死活的に重要だ。

そのため、金正恩政権は乗用車やバス、トラック、重機にいたる車両の大量密輸を朝中国境で行ってきたのだ。北朝鮮側は国の機関が主導するため「国家密輸」と呼ばれてきた。中国側は民間の密輸業者が担い、警備当局はそれを黙認してきた。

鴨緑江が国境を分かつ両江道恵山(ヘサン)と吉林省長白は恰好の密輸拠点となっていた。上流に位置するため川幅が狭く、水位が低い地点を選べば車を渡すことができるからだ。

アジアプレスは昨年9月、恵山市内の至る所に密輸車両とみられる大量の中国車が止められているのを確認。その後、北朝鮮内部の取材協力者との調査と衛星写真の分析を通じて、車両密輸の構造を解き明かす連載を2025年11月に発表した。

その影響があったとみられる。恵山の協力者は「11月末から車両密輸が激減した。日本と韓国で(密輸について)報道されたため、吉林省の公安当局が取り締まりに乗り出した」と伝えてきた。

鴨緑江沿い最大の密輸拠点と見られる場所。中洲には20数台の車両が停まっている。中国側から中州までは流れをせき止めて通路を作り、北朝鮮側には仮設橋が架けられている。大型駐車場も確認できる。グーグルアース

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