大村一朗のテヘランの風 香港・新世代の横顔2

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【大埔(タイポー)地区旧市街の市場。牡蠣やホタテなどの乾物を売る店が並ぶ。】(撮影:大村一朗)

この集まりを主催したのは、李俊さん、30歳。みんなからはジェニンと呼ばれている。元気で歌の上手な女の子だ。

歌い疲れた彼女がようやく一人、少し離れたテーブルに腰かけたのを見て、私は彼女に声をかけた。このパーティーを企画した目的を訊ねると、彼女は少しさかのぼった話から始めてくれた。

「2005年に台湾の楽生療養院の運動所に、2007年には香港の皇后碼頭(クイーンズ・ピア)の取り壊し抗議デモに参加して、自分の住む場所の歴史をよく知ること、そして、歴史的な建造物を残すことの大切さを知りました。

人は、歴史を知らなければ、自分の住む地域はおろか、自分の家ですら愛することはできません。また、自分の住む地域をよく知ること、そして愛することで、他の地域への想像力も持てるようになります。二つのデモから学んだそうしたことを、私も人々に知らせたい。

そのためにまず、自分が住むこの大埔から、自分たちの歴史や文化に関心を持つよう人々に呼びかけようと思ったんです。同じ間違いを繰り返さないためにも」(※日本統治時代に建てられたハンセン病隔離施設。地下鉄建設工事に伴い取り壊しが決まったが、負の歴史遺産としての保存運動と、住み慣れた施設からの強制退去に反対する入所者への支援運動が、日本や香港でも支持者を集めたが、08年12月7日、強制執行が決まる)
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