ジェニンさんは普段、子供たちに写真や演劇を教える仕事をしている。彼女は上記二つのデモでは決して主要なメンバーだったわけではなく(主要なメンバーは取り壊し予定の封鎖区域を占拠し、警官隊と激しく衝突した)、時おりデモ行進に参加する程度だった。彼女はそんな自分を無力でふがいないと感じていたという。

「ここ数年感じてきたことは、香港の人々は他の人たちに無関心で、各自がそれぞれ勝手に生活を送っているということです。それは憐れむべきことだと思うし、それに対して自分が何も出来なかったことも、憐れむべきことだと思います。

あの二つの事件は、私にとって重要な経験でした。今この状況に満足せず、何かを行なおうとしている人たちがいることを知ることが出来たからです。家にいて、何もしないようではいけないと思いました。自分が不満を感じているなら、動かなければと思いました。解決策を見出し、そのために努力することで、自分にも何かを変えられるかもしれないと希望を持ったんです」

このパーティーが行なわれる前、このバーの常連客たちは、顔は見知っていても、互いに話をするようなことはなかったという。
それが今ではすっかり打ち解けて、若い人たちとも言葉を交わすようになった。

帰ってしまったアーティストたちがいたのは残念だが、彼女にとっては文字通り、地域の人が一緒に楽しめる場が生まれることが、今は何より重要なのだ。
それは、今後このバーを拠点にネットワークを築いてゆこうという彼女にとって、小さな第一歩なのである。(つづく)